情報の科学と技術
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情報リテラシー教育のいま
特集:「情報リテラシー教育のいま」の編集にあたって
古橋 英枝
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2017 年 67 巻 10 号 p. 513

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抄録

今月号の特集タイトルは「情報リテラシー教育のいま」です。

日本国内における情報活用能力の教育の必要性に関する議論は,1985年6月の臨時教育審議会第一次答申に始まった,と言われています。1998年から1999年にかけて中学校の技術家庭科において「情報とコンピュータ」が必修になり,高等学校に教科「情報」が新設されました。情報教育における「情報活用能力」は「情報リテラシー」と同義として扱われるようになり,小・中・高等学校図書館(以下,学校図書館)では「調べ学習」や「探究的学習」において一定の役割を果たしてきました。また,大学図書館においても1996年に学術審議会が「大学図書館における電子図書館的機能の充実・強化について(建議)」を公表し,この中で情報リテラシー教育への支援と教育体制の整備が挙げられています。

本特集では,学校図書館における情報リテラシー教育と,大学図書館で実施されている情報リテラシー教育について制度と実際の取り組みについて概観し,相互の連携における課題を明らかにするとともに,初等・中等・高等教育機関全体での情報リテラシー教育のデザインの可能性について論じることを目的としています。

総論では,鶴見大学の河西由美子氏に米国における情報リテラシー概念の発展から日本の情報教育との関連,学校教育及び学校図書館における課題を中心に論じていただきました。

関西大学の黒上晴夫氏には,学校教育における思考スキルの育成に一定の役割を果たしているシンキングツールについて,具体的な思考の過程を解説いただきながら,詳細にご紹介いただきました。この思考スキル・情報リテラシーを,実際の教育現場においてどのように育んでいるのか,初等教育(小学校)については学校図書館の司書教諭のご経験もある,関西大学の塩谷京子氏に,中等教育(中・高)については工学院大学附属中学・高等学校の司書教諭である有山裕美子氏に,高等教育(大学)については大学における情報リテラシー授業の授業設計のご経験のある日本大学の小野永貴氏に,それぞれ実践例を交えつつ,課題や展望について論じていただきました。

本特集が,各教育課程の現場に関わるみなさまにとって,また,学校図書館・大学図書館のみならず,生涯学習を支える地域の公共図書館で勤務されるみなさまにとっても,日々受け取る多くの情報をいかに判断し,正しく活用し,他者とのコミュニケーションにつなげ,新たな視点を得ることで成長していくのか,という人類の基本的な行動について,改めて考える機会になれば幸いです。

(会誌編集担当委員:古橋英枝(主査),小山信弥,中村美里,久松薫子)

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