本稿では,公的研究資金の選択的配分の前提としておこなわれる研究評価事業によってもたらされる意図せざる結果について検討する。英国の研究評価事業を事例として取り上げ,同事業が研究活動テーマや方法論の均質化に結びついていく可能性について見ていく。焦点をあてて検討するのは,商学・経営学の領域における論文化の傾向である。この領域では,研究評価事業に際して提出される研究成果においてジャーナル論文の占める比率が急速に増加していった。これは,同領域が偏狭な業績主義によって席捲され,「ジャーナル駆動型リサーチ」が優勢になってしまう可能性を示唆するものである。