情報の科学と技術
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特集:データベースの設計,構築,活用
特集:「データベースの設計,構築,活用」の編集にあたって
南山 泰之
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2017 年 67 巻 9 号 p. 441

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抄録

2017年9月の特集は「データベースの設計,構築,活用」です。

「データベース」の定義は,著作権法第二条の十の三によれば「論文,数値,図形その他の情報の集合物であつて,それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」とあります。また,データベースは一定の要件のもと,著作物として保護されることが定められており(同法第十二条の二),データが体系的に集まることで新たな価値を生むことは法的にも自明となっています。

では,望ましい「体系化」とはどのようなものでしょうか。データは検索するためだけではなく,そのデータを利活用する,あるいは長期保存するために整理されますが,その構造は一様ではありません。データのサイズやフォーマット,あるいは社会的な配慮を要するデータの存在など,データベースの構造は形式面,内容面の違いに大きく依存します。そして,近年におけるデータベースに関わる理論面の進展やその実践によって,データベースに求められる機能や得られる価値も変わり始めています。「望ましい」体系化は,今どう移り変わっているのでしょうか。

本特集では,上記のようなデータベースの変容を多角的に見つめ,その潜在的な価値を再考するという特集趣旨のもと,7人の方々から異なる視点の論考をいただきました。

データベースを「設計」する,という視点において,慶應大学文学部の谷口祥一氏からは,データベースを設計するための概念モデル構築について論考をいただきました。また,株式会社教育測定研究所の西原史暁氏からは,利活用を前提としたデータ形式の設計に役立つ「整然データ」の概念につき,詳細な解説をいただきました。

データベースを「構築」する,という視点において,北海少年院庶務課の那須昭宏氏からは,刑事情報連携データベースの構築事例についてご寄稿いただきました。また,国立国会図書館電子情報部の木目沢司氏,情報通信研究機構の村山泰啓氏からは,データの長期保存の事例としての国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)の利用や,電子情報の長期保存の規格であるOAIS参照モデルに関する考察をいただきました。

最後に,データベースを「利用」する,という視点において,OKA情報技術コンサルテーションの岡紀子氏からは,「データベースの検索」を根底においた検索の歴史,技術やノウハウの紹介をいただきました。また,東邦大学習志野メディアセンターの眞喜志まり氏からは,医学・薬学系分野の出版特性を反映したデータベースの検索手法につき,詳細な解説をいただきました。

いずれも,様々なデータを背景に構築されたデータベースのあり方が現された論考であり,「ある単一の検索システムをデータベースと呼ぶ」伝統的な理解を超える幅広さが示されています。

本特集が,広くデータの取り扱いに関心のある全ての方々にとって,「データベース」をより深く理解し,今後のあり方を考える一助となることを期待します。

(会誌編集担当委員:南山泰之(主査),増田智子,長屋俊,水野翔彦)

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