2020 年 70 巻 6 号 p. 283
2020年6月号の特集は「ウェブを基盤とした社会」です。
ティム・バーナーズ=リーが1989年に生み出したWWWの仕組みは,ウェブ上の情報資源の拡大に伴い人々の行動に影響を与え続けています。例えば,ウェブの情報検索による調べ物や,SNSによるコミュニケーション,ウェブサービスを利用した商品購入など,日々の生活にウェブは欠かせない存在になっています。
本特集では,ウェブの成り立ちや仕組み,社会や私たちの生活に与える影響について5人の方々から解説をいただきました。
総論では東京大学の大向一輝氏に,ウェブが人々のコミュニケーションや社会のあり方に与えた影響について2010年代を中心に概説いただき,今後の課題についてについて「法」「規範」「市場」「アーキテクチャ」の観点から議論していただきました。
NTTセキュアプラットフォーム研究所の奥田哲矢氏には,ウェブサービスを支える通信技術について,セキュリティの観点からSSL/TLSとPKIに関する歴史と仕組み,そして今起こりつつある変化について解説をいただきました。国立情報学研究所の武田英明氏には,ウェブと社会との関りについてウェブの本質である「繋ぐ」ための仕組みや技術から解説をいただきました。大阪電気通信大学の古崎晃司氏には,多種多様な知識データを統合的な一つの知識ベースとして扱うナレッジグラフの技術について解説をいただきました。名古屋大学の笹原和俊氏には,ウェブの負の側面について,フェイクニュース拡散の仕組みを中心に解説をいただきました。
登場から30年余りたったウェブの広がりが,今後の私たちの情報行動や生活そのものにどのような変化をもたらしていくかを見つめなおす特集となれば幸いです。
(会誌編集担当委員:炭山宜也(主査),南山泰之,今満亨崇,野村紀匡)