2016 年 67 巻 p. 9-13
細胞外マトリックスタンパク質であるLTBP-2の生体内での機能は不明であった.しかし,LTBP2遺伝子の変異家系が複数報告され,発症機序は不明であったが,先天性緑内障・水晶体脱臼を発症していた.今回我々は,新たに作製したLtbp2–/–マウスの解析を行った.Ltbp2–/–マウスは,水晶体を支持するミクロフィブリルからなる毛様小帯の形成不全があり,水晶体脱臼を発症していた.マウス眼球の組織培養による実験から,LTBP-2は毛様小帯の線維束形成に必須のタンパク質であることを示した.このマウスの水晶体脱臼の原因が,レンズを支える毛様小帯の形成不全であることを証明した.
ヒトLTBP2変異遺伝子を用いた遺伝子導入実験をおこない,報告されている全てのLTBP2変異家系の水晶体脱臼の表現型の原因を考察した.変異家系の表現型発症の原因は,変異LTBP-2が毛様体を形成する細胞から分泌されないこと,もしくは分泌されても,変異LTBP-2がFibrillin-1と結合できないことにより,ミクロフィブリルの線維束形成不全がおこることに起因すると示唆された.
これまで不明であったLTBP-2の生体内での機能を明らかにし,LTBP2変異家系の表現型発症機序を提唱した.