関西医科大学雑誌
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HSP70遺伝子導入による内耳有毛細胞変性抑制とHSP70発現部位の検討
髙田 洋平髙田 智子岩井 大友田 幸一Raphael Yehoash
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2017 年 68 巻 p. 1-7

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抄録

主な感音難聴の原因としては内耳における有毛細胞の細胞死によって,しばしば引き起こされる.また,有毛細胞は自己再生しないことも報告されている.HSPsは全ての細胞においてタンパク質のフォールディングを制御する分子シャペロンとしての機能を持つ.HSPsとは,細胞が熱・音響外傷・耳毒性薬剤などの条件下にさらされた際に,発現が上昇して細胞を保護するタンパク質の一群であり,その中でもHSP70は,熱やその他のストレスによって引き起こされた細胞のアポトーシスを抑制することで知られている.今回我々は,カナマイシンとフロセマイドの2剤を用いて,内耳毒性薬剤による難聴モデル動物(モルモット)において, アデノウイルスベクター(Ad)を用いて蝸牛内にHSP70を投与してこれを過剰発現させ,有毛細胞変性や聴力障害の抑制効果を検討した.また,HSP70染色を用いてHSP70がコルチ器のどの部位に発現するかも検討した.Ad.HSP70-mCherryもしくはコントロールベクターとしてAd.mCherryを内耳障害4日前に先立って投与した.機能的評価として,ベクター投与前と内耳障害14日後に,ABR(聴性脳幹反射)も測定し比較検討した.コントロールベクター投与耳,非投与耳において,ほとんどの有毛細胞が内耳障害によって変性消失されていたにもかかわらず,HSP70-mCherry投与耳においては,内有毛細胞を庇護し変性を抑制すること,さらに機能的にも難聴の進行を抑制することが示唆された.また,HSP70は蝸牛コルチ器の支持細胞内に,mCherryと一致して発現することも示唆された.

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© 2017 関西医科大学医学会
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