関西医科大学雑誌
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1型自己免疫性膵炎(LPSP)と2型自己免疫性膵炎(IDCP)の好中球浸潤の比較
光山 俊行内田 一茂住本 貴美福井 由里池浦 司福井 寿朗西尾 彰功四方 伸明植村 芳子里井 壮平水野 伸匡能登原 憲司下瀬川 徹ザンボーニ ジュセッペフルローニ ルカ岡崎 和一
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2018 年 69 巻 p. 7-18

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抄録

【背景】自己免疫性膵炎(Autoimmune pancreatitis; AIP)はわが国から提唱された疾患概念である.2011年に国際コンセンサス診断基準が作成されIgG4の関与するものを1型自己免疫性膵炎,好中球病変が主体とするものを2型自己免疫性膵炎と分類することとなった.2型自己免疫性膵炎の組織像として,好中球が膵管内腔や上皮に集簇し,管腔の破壊や閉塞をきたすことが特徴的である.2型自己免疫性膵炎は好中球が重要な役割を果たしていると言われているが,好中球が遊走されるメカニズムや自然免疫の関与については解明されておらず,1型自己免疫性膵炎との免疫学的相違は全く不明である.そこで今回我々は好中球遊走に関わるケモカインなどの差異について検討した.

【研究方法】1型自己免疫性膵炎10例と2型自己免疫性膵炎12例の膵切除標本を用いて,小葉間膵管と小葉内膵管にわけて免疫組織学的検討を行った.2型自己免疫性膵炎は好中球が重要な役割を果たしていることから,好中球遊走作用因子と言われているCXCケモカインのGCP-2,IL-8と,その受容体であるCXCR1/2を免疫染色した.

【結果】HE染色では,小葉間膵管周囲の好中球数は2型が1型と比較し有意に高値であった.一方で小葉内膵管周囲の好中球数は1型と2型に有意差を認めなかった.免疫組織学的検討では,小葉間膵管上皮のGCP-2スコアは2型が1型と比較し有意に高値であったが,小葉間膵管上皮のIL-8スコアは1型と2型で有意差を認めなかった.一方で小葉内膵管上皮のGCP-2スコアとIL-8スコアは共に1型と2型で有意差を認めなかった.CXCR1陽性好中球数の比率は小葉間膵管周囲,小葉内膵管周囲共に1型と2型で有意差を認めなかった.CXCR2陽性好中球は1型と2型共に認めなかった.

【結論】小葉間膵管周囲の好中球浸潤に関わる重要な因子は,好中球の免疫組織学的な相違によるものでなく,膵管上皮から分泌されるGCP-2の相違であることが示唆された.

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