関西医科大学雑誌
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麻酔薬がインスリン分泌に与える影響とその作用機序
楠 宗矩林 美樹夫正司 智洋右馬 猛生田中 宏昌角 千里松尾 禎之廣田 喜一
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2021 年 72 巻 p. 23-27

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抄録

血糖値を適切にコントロールすることは,周術期や集中治療における重要な治療目標である.膵β細胞からのインスリン分泌は,血中グルコース濃度の上昇に応じて惹起され血糖コントロールにおいて重要な役割を担う.これまでの研究で揮発性麻酔薬を含む周術期に使用する麻酔薬がグルコース刺激インスリン分泌に影響を与えることが報告されている.一方,麻酔・集中治療領域で広く使用されている静脈麻酔薬が,グルコース代謝やインスリン感受性に与える影響は,細胞生物学的にほとんど検討されていない.我々は電気生理学的手法を用いることでプロポフォールが臨床使用濃度においてストロマトキシン-1感受性の電位依存性K+チャネルを特異的に阻害し,MIN6細胞,INS-1細胞,マウス膵β細胞/膵島において,グルコース存在下でインスリン分泌を促進することを示した.麻酔薬がインスリン分泌に与える影響やその作用機序を解明することは,臨床使用における患者への影響を理解する上で重要である.

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© 2021 関西医科大学医学会
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