関西医科大学雑誌
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医用画像を用いた学生自身による三次元像再構築とその教育効果の可能性
中野 洋輔大江 総一林 真一小池 太郎関 亮平北田 容章
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2021 年 72 巻 p. 35-41

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抄録

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは,様々な分野において半ば強制的に非対面のオンライン化を促すこととなったが,対面実習の完全な代替に至っているとは言い難い.これは医学教育においても例外ではなく,特に人体の三次元構造を学習する肉眼解剖学実習は,その特性上オンラインでの代替は困難である.本研究では,肉眼解剖学を履修する医学部生を対象に,オープンリソースの医用画像からの三次元像再構築を目的とする特別課題を実施し,学生自身による三次元像再構築の可能性と,人体の三次元構造に対する理解度の向上に効果があるかを検証した.本研究では,肺を題材として取扱い,DICOMデータの入手法やソフトウェアの利用法に関するオンデマンド動画を教材として提供することで,非対面自学自習形式の課題を課した.その結果,本課題に参加した学生の96.0%が三次元再構築像を提示し,うち17.2%の学生は肺区域や気管支,血管の立体構造を含む完全な三次元再構築像を提示するに至った.また,本課題の得点,および参加・不参加により学生を4グループに分け,人体の三次元構造を問う実習形式試験の平均点を解析した結果,人体の三次元構造を問う実習形式試験において,統計学的な有意差はみられなかったものの本課題の得点との一定程度の相関傾向がみられた.本研究により,適切な教材を提供することで学生自身による医用画像からの三次元像再構築は十分可能であることが明らかとなった.また,本研究で用いた非対面自学自習形式教材が人体の三次元構造理解促進に有効である可能性が示唆された.

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