関西医科大学雑誌
Online ISSN : 2185-3851
Print ISSN : 0022-8400
ISSN-L : 0022-8400
アデノウイルスを用いたGDNF発現による蝸牛有毛細胞およびらせん神経節細胞保護作用
八木 正夫
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 57 巻 2-4 号 p. 183-187

詳細
抄録

感音難聴の治療については高度感音難聴に対する人工内耳など限られた治療以外では薬物療法が一般的であるが,必ずしも有効でないのが現状である.近年,神経成長因子の中枢および末梢神経系における作用については,様々な研究により急速に解明されつつあり,内耳においても初期発生,形態維持,細胞死などに重要な役割を担っていることが解ってきた.NTL3, BDNF, NGE FGF2,GDNFなどの神経成長因子が内耳有毛細胞やラセン神経節細胞(SGC)の保護作用を有することが報告されている. Glial cell-lined erived neurotrophic factor(GDNF)はTGF-pスーパーファミリーに属し,中脳培養細胞のドパミン取り込みを促進させる神経成長因子として初めて精製され,中枢及び末梢神経において保護作用を有することや,腎および腸管神経系の発生に関与していることが報告されている.GDNFはGDNF familyレセプター(GFR)とレセプター型チロシンキナーゼ遺伝子(Ret)というレセプター複合体を介して情報伝達されることが解っている.内耳でのGDNFの産生部位とレセプターの局在については未だ不明な点が多いがそれぞれ内耳に存在することはin situ hybridi-LationおよびRTPCRにて確認されている. 蝸牛は側頭骨に囲まれており,内腔が液体で占められているため,遺伝子治療の格好の標的組織であると考えられている.そこで今回アデノウイルスベクターを用いて,GDNFを直接内耳に発現させることにより,その内耳における有毛細胞やらせん神経節細胞の保護効果について検討した.

著者関連情報
© 関西医科大学医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top