日本地すべり学会誌
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論文
降雨浸透に伴う地下水流の発達・減水過程と斜面崩壊に及ぼす影響に関する考察
森脇 寛矢崎 忍黄 文峰
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2006 年 43 巻 1 号 p. 9-19

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抄録

降雨浸透に伴い斜面土層内に発達する地下水流について, ダルシー則が適用できるものとして導いた物理方程式により定常流, 非定常流について検討を行った。定常流については斜面上の位置と水位の関係を陰関数の形で表した。非定常流については近似解, 数値解法により基本的な発達・減水過程を明らかにするとともに降雨特性や斜面勾配の変化が地下水流の形成ならびに斜面崩壊に及ぼす影響について考察した。その結果を以下に要約する。(1) 定常降雨下では, 地下水位は斜面下方に行くにつれて高くなるが, 斜面上方では時間経過とともに徐々に一定値に近づき, 斜面中・下方域では不透水層面にほぼ平行な水位を有する流れを示しながら, 水位を上昇していく形態を示す。(2) 近似解によれば斜面上方域では斜面上端からの距離に比例した「定常域」, 斜面中・下方域では時間に比例して水位が斜面に平行に増加・上昇する「斜面平行増加域」となり, 両者の境界点は時間とともに下方へ移動する。斜面中・下方域における地下水位の上昇速度は降雨強度に比例し, 有効空隙率に反比例する。(3) 降雨が停止すれば, 地下水面形はその形をほぼ維持したまま斜面下方へ流下する形をとる。(4) 降雨強度が大きいほど水位上昇速度は大きく, 斜面上方まで水位が高くなる。(5) 同一総降雨量では断続的に降るよりも連続的に降るほうが斜面全層にわたって水位が高くなり, 全層崩壊の危険性が高いが, 断続的な降雨の場合, 斜面下方の水位が特に高くなり, パイピング崩壊や洗堀崩壊の危険性が大きくなる。(6) 不透水層が遷緩点を有する斜面では, その付近で水位が特に高くなる。また, 降雨停止後もしばらくの間, さらに水位が上昇する。一方, 遷急点を有する斜面ではその付近で水位が低下する。(7) 近似解を用いて, 地下水流の発達に伴う斜面土層の安全率の時間変化を表した。

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