日本地すべり学会誌
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論文
2008年岩手・宮城内陸地震後の降雨により崩壊が発生した山地斜面の地形的特徴
村上 亘大丸 裕武金子 守男
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2017 年 54 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

 2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震の直後, および3ヶ月後の9月に計測された航空レーザー測量データより作成した陰影図, 等高線図, 断面図を比較し, 地震後の降雨により崩壊が発生した斜面の崩壊前の地形的な特徴を調査するとともに, 調査結果をもとに同様な地形的特徴を持つ斜面を抽出し, 現地で確認した。地震後の崩壊は通常より少ない降雨で発生していた。崩壊が発生した斜面では, 崩壊発生前は楕円あるいは馬蹄形の緩斜面が存在し, そこに地震によって亀裂が発生していたと判断された。この地形的な特徴は, 近傍の崩壊が発生していない斜面において同様な地形を判読し, 現地調査から複数の斜面で亀裂の発生を確認したことで確かめられた。亀裂が発生している斜面では, 貫入試験と土層断面調査の結果からNc値が10~30の風化層が比較的厚く, 風化層内あるいは下層のNc値が40以上の硬い層との境界付近にNc値が5以下の軟弱な層が形成されており, 地震後に崩壊が発生した斜面ではそれらをすべり面としてその後の降雨によって崩壊が発生したことが推測された。

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