哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan
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北海道産Clethrionomys属2種における食性とその種間関係
高橋 朋子
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1986 年 11 巻 3-4 号 p. 107-115

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抄録

北海道産2種のヤチネズミ属 (エゾヤチネズミとミカドネズミ) について, 食物選択の面からその共存機構を明らかにするため, 食性の季節変化, 植物現存量, 生息密度, 微生息場所に関する調査が行なわれた。
1) ミカドネズミは, その食性としてGC (イネ科とカヤツリグサ科植物) 以外の植物質 (OP) をより高く選択した。これはOPの現存量が少ない時期にも変化しなかった。
2) エゾヤチネズミの食性は, 資源の変化に対する適応性に富んでいた。すなわち基本的にはOPを選好するが, その現存量の少ない時期には, GCの利用を増大させた。
3) 両種のこの傾向は, 密度の優劣に関係なく一定であり, 特にすみわけの結果生じた二次的なものであるとも言えなかった。
4) 両種にとって共通資源であるOPの量が, ネズミの総生息数とのバランスによって規定されるある値以下に減少した場合には, より狭い食物nicheを持つミカドネズミはその食性を維持したが, より広い食物nicheを持つエゾヤチネズミは利用の中心を他の食物に転換させた。この方法によって, 両者は種間の摩擦を回避する機構を形成していると考えられた。

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