音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
Print ISSN : 1348-9038
研究報告
色と絵画を基にした音楽づくり
学習者の独自性を発揮する枠組みとして
小島 千か
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 18 巻 p. 21-32

詳細
抄録

「音楽づくり」の学習活動は、近年では学習者が音楽の構成要素、表現媒体、形成原理などの視点から音楽を理解することを目指して、用いる要素や構造があらかじめ決められた枠組みの中での活動へとシフトしている。しかし、学習者がある程度の枠組みの中で自ら音楽の構成要素、表現媒体、形成原理について思考・判断し、独自に音楽を形づくることも必要であると考える。今回はその枠組みとして「色を基にした音づくり」と「音楽の形成原理に基づく絵画から発展する音楽づくり」を提案し、この枠組みの有効性の検証を目的とした実験授業を実施した。

実験授業は、大学生を対象に打楽器を用いてグループによる 3 段階で計画された。第 1 段階では、色を基にした音づくりにより、構成要素と表現媒体に対する思考・判断を促すことができることが明らかとなった。第2段階では、時間構成のガイドとなる絵画を用いて活動を行った。なお、音楽全体の構成に集中できるよう,絵画で用いられた色に限定して音づくりをした。その結果、音楽の形成原理や構成についての思考・判断が促され、音楽づくりができることが明らかとなった。第3段階では、第2段階でつくった音の色と同じ色で構成される絵画を基に音楽づくりを試みた。しかし、独自に形成原理を思考・判断し音楽を形づくることができなかったグループが存在した。

以上の実験授業から、これらの活動の効果は明らかとなったが、全員が達成できるためには、音づくりにおいても音楽づくりにおいても何らかの条件づけが必要であることが明らかとなった。なお、音楽づくりの副産物として、拍節的な部分と拍節のない部分の混在、間まや異なるテーマの重なりなど多様な表現がみられた。これは今回の枠組みを用いたからこそ学習者の独自性が発揮され生み出されたと考えられる。

著者関連情報
© 2020 日本音楽表現学会
前の記事 次の記事
feedback
Top