順天堂醫事雑誌
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症例検討
当院における単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術の検討
吉田 範敏大橋 直樹森 義之丸山 俊朗井原 厚渡野辺 郁雄渡辺 心塚田 暁清水 秀穂三木 猛生
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2014 年 60 巻 Suppl.2 号 p. s60-s64

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抄録

目的:当院のこれまでの単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術(以下,TANKO-LC)を含む腹腔鏡下胆囊摘出術について分析し,TANKO-LCを安全に行うための適応と手技について検討したので報告する.
対象:2011年2月から2012年7月までの腹腔鏡下胆囊摘出術28例を対象とし,この期間をTANKO-LC導入の初期,中期,後期の3期間にわけて検討した.次に,検討した結果をもとに,その後1年間に施行した腹腔鏡下胆囊摘出術14例において,手術時間,出血量,在院日数から当院のTANKO-LCの適応の正当性の評価を行った.
結果:手術時間は,導入初期から中期にかけて短縮できたが,症例を選択しなくなった後期では延長し,出血量は多くなっていた.術後在院日数の差はみられなかった.そのためこの間のTANKO-LCで行った全症例を,術前DIC-CT検査で胆囊造影が陽性で炎症の程度が低いと思われた症例と胆囊造影が陰性で炎症の程度が高いと思われた症例にわけて比較したところ陽性例は102.6分,陰性症例は113.7分であり,陰性症例に手術時間の延長がみられた.そのため,その後1年間の腹腔鏡下胆囊摘出術14例に胆囊造影陽性症例にはTANKO-LCを,胆囊造影陰性症例には4孔式腹腔鏡下胆囊摘出術(4孔式LC)を施行した.その結果,TANKO-LC 9例の平均時間は98.9分(4孔式LC 5例は83.0分)となり,TANKO-LCの手術時間が短縮された.
考察:TANKO-LCは特に大きな手術器具も購入せずに導入可能で,整容性にも優れ,症例を検討して適応を決定すれば,今後の腹腔鏡下胆囊摘出術において有用な術式になりうると考えられた.

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