2012 年 5 巻 1 号 p. 8-10
医師は患者の安定性を重視し、音楽療法士は患者が充実感を味わう非日常的な体験を重視する。医師は患者の「平均からのズレ」に着目するが、音楽療法士は患者の「健康性」に着目する。治療に置いて、医師はエビデンスにもとづいて意思決定を行なうが、音楽療法士は意思決定に際して「直観」や「美的判断」も用いる。こうした医師と音楽療法士双方の相違点は、対立的ではなく、むしろ相補的である。医療現場で音楽療法がその力を発揮するためには、医師・音楽療法士の双方が、相互のスタンスの相違と相補性を認めることが重要である。