抄録
超低温保存卵子の耐凍剤除去過程に蔗糖を含む高張液が多用されているが,この過程に卵子が浸透圧的傷害を受ける可能性がある.そこで,Metaphase II~拡大胚盤胞期のマウス卵子を25℃の蔗糖添加PBSに30分間保持し,生存性に及ぼす影響をしらべた.新鮮な卵子は,蔗糖濃度が0.75 M以下では影響を受けなかったが,1.0 M以上では生存性が低下した.特に,Metaphase IIおよび8細胞期の卵子では低下が大きく,一方,2細胞期胚と拡大胚盤胞では低下は小さかった.これに対して,ガラス化保存した卵子を回収直後に高張液処理した場合には,いずれのステージにおいても,新鮮卵子に比べて生存性は急激に低下し,超低温保存卵子が高張ストレスに対する耐性が低いことが明らかになった.また,ガラス化保存卵子を高張液処理前に短時間培養することによって耐性が回復することも判明した.