MACRO REVIEW
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輸送の価値としての「速さ」
マクロプロジェクトの目的としての高速化
平林 英一
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1996 年 9 巻 1 号 p. 111-119

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抄録

輸送のヤクロプロジェクトの主要な目的ないしはそこに見いだされる価値の一つは「高速化」である。長期的にみれば、高速の輸送機関が低速の機関を駆逐してきたのが歴史である。これを供給側からみれば、技術革新の時をえれば、高速化が供給費用の低下をもたらすという原理がはたらくからと説明される。一方需要側からは、賃金率の高い者ほど輸送のための(不要な)時間短縮の動機が強く、所得水準の上昇とともに全般に高速性選好が高まると指摘される。しかし経済的側面からのみの説明では不十分で、現代人の時間短縮の願望、その根底にある時間意識のありかた、そのような意識を一般化させてしまう(とくに日本の)現代社会ありようにまで遡る。早く、早くと言われ続けて育った子供は、時間の奴隷と化し、時間に追われた疾走前傾姿勢のまま一生を送るであろう。 輸送マクロプロジェクトはもっぱらシーズ先行型であり、ニーズの研究がおろそかになっているように思う。小論がその一端を担えれば幸甚である。

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© 日本マクロエンジニアリング学会
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