気象集誌. 第2輯
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大規模な風のパターンに関連した北西太平洋におけるトロピカルストームの発達条件
筆保 弘徳吉田 龍二山口 宗彦永戸 久喜室井 ちあし西村 修司別所 康太郎及川 義教小出 直久
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2020 年 98 巻 1 号 p. 61-72

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抄録

本研究は、2009年から2017年にかけて北西太平洋で発生した熱帯低気圧(TC)において、トロピカルストームの強度に発達する前に減衰した熱帯低気圧(TD)の特性と環境場の条件を調査した。特に、大規模な流れパターンと関連させて、トロピカルストームの強度まで発達した熱帯低気圧(TS)と比較した。流れパターンは以下の5つに分類した。シアライン(SL)、東西風合流域(CR)、モンスーンジャイア(GY)、偏東風波動(EW)、および既存のTCからのロスビー波応答で発生したパターン(PTC)である。ベストトラックデータと早期ドボラックデータを用いて、476例のTC事例のうち、263例のTDが検出された。CRまたはPTC(EW)のパターンで発生したTCは、他のパターンと比較してトロピカルストームの強度に達する(達しない)割合が多い。夏と秋のCR、GY、およびEW(PTC)のTDの平均位置は、同じパターンのTSよりも西(東および北)に偏っていた。TDの周囲の環境場パラメータはTSよりも発達に不向きな傾向があり、CR、EW、PTC(SL、GY、PTC)で大気(海洋)の環境場パラメータに有意な差がある。流れパターンで分類したトロピカルストームの強度に達するための環境場条件は以下のようにまとめられる。SLとGYはより高いtropical cyclone heat potential、CRはより弱い鉛直シア、EWはより湿潤な場、そしてPTCはより高い海面温度と先行のTCが強いことである。

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© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.

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