気象集誌. 第2輯
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内部重力波との相互作用をとり入れた中層大気大循環の準一次モデル
松野 太郎
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1982 年 60 巻 1 号 p. 215-226

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抄録

中層大気大循環の理論や数値実験において,従来中間圏界面あたりより上で非常に大きなレイリー摩擦が仮定されて来た。これによって平均東西風を減速しないと実際にみられるような状態(中間圏•下部熱圏で夏が低温,冬が高温になるという現象をふくむ)を再現できないのである。この研究では人為的なレイリー摩擦を取り除き,その原因と考えられて来た内部重力波による運動量輸送の効果を直接とり入れたモデルにより中層大気大循環の簡単な計算を行った。Leovy(1964)およびSawada and Matsushima(1964)の研究に従って大循環を線形摂動問題として定式化し,南北構造についてひとつのモードのみをとり,あたかも鉛直方向に一次元の問題のようにみなして内部重力波の伝播と,その減衰による平均流加速効果を計算した。これはPlumb and Mc-Ewan(1978)による実験室中のQBOの理論とほとんど同じである。成層圏の下部にあたるモデルの下端であらゆる方向に伝播する成分を等しくもった内部重力波を仮定すると,上方伝播に際して成層圏の主風系と同じ向きに伝播する波は捕えられてしまい,逆向きの波のみが中間圏界面高度にまで到達し得る。この波が,大きな渦粘性(そのような形の高さ分布を仮定した)のために減衰し,この領域で逆向きの加速を行う。上層の密度が小さいので逆向き加速は著しく,レーリー摩擦の如く作用する。ただし,この場合には90km以上に下層と逆向きの東西風を生じた。これは実際の観測にも見られるもので,上記のメカニズムが妥当であることを示している。

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© 社団法人 日本気象学会
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