気象集誌. 第2輯
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10μm帯窓領域2チャンネルデータによる半透明絹雲の温度および有効射出率の算定
井上 豊志郎
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1985 年 63 巻 1 号 p. 88-99

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抄録

衛星で観測された11μmと12μmの二つのチャンネルの輝度温度差を用いて作成された画像から半透明の絹雲域が,晴天域より大きい温度差を持つ領域として明瞭に判別された。
絹雲の,この波長帯における有効射出率を散乱を無視した簡単な雲モデルを用いて計算した。積乱雲に伴うアンビルでは,中心付近に輝度温度差の無い黒体域が見られる。黒体域を持つ絹雲について,半透明域の温度を黒体域の温度と同じと仮定し,また絹雲底への放射量は近傍の晴天放射量と同じと仮定し各チャンネルでの有効射出率を計算した。
二つのチャンネルの有効射出率の間に,理論から期待される関数型を持つ簡単な関係式が,8例の絹雲での860の観測値から,回帰的に決定された。
この関係式を用いた,11μmおよび12umの2チャンネル衛星データによる絹雲の温度および有効射出率の算定法を開発した。この手法を黒体域を持つ絹雲5例で検証し,11μmでの有効射出率が0.4以上の絹雲に対しては良い結果を示すことが分かった。

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© 社団法人 日本気象学会
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