気象集誌. 第2輯
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台風の多角形眼の構造
村松 照男
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1986 年 64 巻 6 号 p. 913-921

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抄録

明瞭な多角形眼が台風8019のPPIエコー上で観測された。直径30kmの眼は4角形から6角形までその形を変え,台風眼中心に対して半時計回りに回転していた。回転周期は5-6角形で41-43分,4角形で47-50分と回転速度が速い(周期が短い)ほど多角形の角数が増加した。多角形眼は形状を変えながら約15時間観測され,5角形が最も頻度が高く,111分という長寿命であった。逆に,4角形は不安定で寿命は12分前後で,頻度も最もひくく,3角形や7角形は観測されなかった。
多角化は眼の壁雲の最も内側の数km幅の狭い領域で起こっていた。眼の中の小エコーセルの追跡の結果,小エコーセル(眼の中の気塊)は等角速度運動をしており,多角形に変形した部分はそれよりやや速い速度で回転していた。多角形眼の現象は水平シヤーの大きい,眼の中の下降流と眼の壁雲の上昇流領域の境界で起こり,境界面の不安定を示唆する多角形の各辺の波打ち現象がしばしば見られた。この現象は発達した台風(ハリケーン)で明瞭な二重眼構造をもつ,中心気圧940mb前後,眼径が30-50kmの場合で多く見られた。

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