気象集誌. 第2輯
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夏季中国大陸の気候変動と大気循環, 熱帯対流活動との関係
新田 勍胡 増臻
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1996 年 74 巻 4 号 p. 425-445

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抄録

本論文では, 中国大陸における1951~1994年の夏季平均降水量と気温のデータに, 主成分(EOF)解析, 特異値分解(SVD)解析を適用し, 年々~数十年規模変動について調べた. また, 北半球大気大循環, 熱帯対流活動, 海面水温との関連についても調べた. まず, 中国大陸の夏季平均降水量, 気温データにEOF解析を適用し, 変動の時間・空間的特徴を求めた. 降水量の第1主成分は, 揚子江流域で大きな振幅を持ち, 黄河流域では逆の偏差を示す. 一方, 気温の第1主成分は中国大陸全域で同じ変動を示し, 揚子江流域で最大振幅を持つ. これらの第1主成分は時間的に増加(降水)・減少(気温)傾向を示すとともに, 1970年代半ばからは約2年周期変動が顕著になる. 次に, 降水量と気温データに特異値分解(SVD)解析を適用し, 両者に共通した変動成分を抽出した. SVD第1主成分の降水量変動及び気温変動は, それぞれEOFで得られた第1主成分に対応する. この変動成分は, 北半球500hPa高度と強い相関を持ち, 太平洋一日本(PJ)パターンやユーラシア(EU)パターンと密接な関連を有している. 一方, SVD第2主成分は, 揚子江を境にした南北逆位相の変動を示しており, 1970年代半ばで急激な変化を示している. この1970年代半ばの急激な変化に対応して, 西太平洋の亜熱帯高気圧が強まるとともに南下し, ユーラシア大陸と東シベリアでも高度が変化していることが明らかになった. 外向きの長波放射データ, 上層雲量データの解析から, SVD第1主成分は, 西部熱帯太平洋の対流活動と密接な関係があることがわかった. また, 中緯度北太平洋および熱帯太平洋の海面水温とも相関が認められる. 中国と日本降水量・気温変動の関係を調べたところ, 揚子江流域の降水量変動と西日本の降水量変動が, また, 中国の気温変動と日本の気温変動がそれぞれ密接な関連をもって変動していることがわかった.

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© 社団法人 日本気象学会
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