気象集誌. 第2輯
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レーダーと放射計データを融合した熱帯降雨観測衛星(TRMM)打上げ時用降雨鉛直分布推定アルゴリズム
Ziad S. HaddadEric A. SmithChristian D. KummerowToshio IguchiMichael R. FarrarStephen L. DurdenMarcos AlvesWilliam S. Olson
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1997 年 75 巻 4 号 p. 799-809

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抄録

レーダーと放射計のデータを組み合わせ降雨の鉛直分布を推定する熱帯降雨観測衛星(TRMM)の打上げ時のアルゴリズムについて記述する。本アルゴリズムは、降雨レーダー(PR)とTRMMマイクロ波放射計(TMI)がそれぞれ固有に持っている不確かさを考慮して作成されている。降雨推定値に大きな偏差をもたらす可能性のある特別の仮定をもうけず、なおかつ1997年後期のTRMM衛星打上げ時に運用可能なよう簡単化を図っている。本アルゴリズムでは、レーダー反射因子を使って降雨プロファイルを推定する方法を基本としているが、その中において、レーダーデータから得られる結果が放射計から推定された善降雨減衰量と矛盾してはならないという拘束条件を課している。このデータ融合を行うために、解くべき問題を粒径分布パラメータを用いて定式化している。粒径分布パラメータの事前確率密度関数(pdf)から出発し、ベイズ法を用いて、レーダーおよび放射計の測定値に基づいて次々とpdfに条件をつけている。こうして得られたアルゴリズムは、数学的に矛盾が無く、物理的にも妥当なものである。このアルゴリズムから得られる条件付き分散を使って推定値の確度を数量化することができる。分散の大きさにより、アルゴリズムで仮定しているモデルの適切性を判断できる。

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