気象集誌. 第2輯
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TAOブイ観測に基づく赤道太平洋上の潜熱フラックスの年周期について
Hae-Kyung LeePao-Shin ChuC. -H. SuiK. -M. Lau
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1998 年 76 巻 6 号 p. 909-923

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抄録

熱帯太平洋(8°N-8°S)の1992年から1996年までの期間について日平均のTAOブイ観測データを使用して、海洋上の潜熱フラックス(LHF)と関連するバルク変数(海面水温、風速、湿度差)の年周期について調べた。西部太平洋で頻繁に観測される活発な対流と弱風を説明するために、改良型バルクパラメタリゼーションスキームを用いてLHFを計算した。また、年周期と半年周期の振幅・位相を同定するために調和解析を適用した。
LHFの年周期は二つの地域、北東太平洋と西部/中部太平洋で特徴的な違いがみられた。前者の地域では、海上風速が強く、海面と大気境界層の底面付近との間の温度差が大きい北半球夏季および初秋の時期にLHFの極大が生じていた。西部/中部太平洋では、冬季モンスーンが強い北半球冬季でLHFの極大が生じていた。これらの二つの地域とは対照的に、赤道cold tongue域のLHFの年周期は弱く、年を通してLHFは小さい。また、LHFの極大域は7月頃北東太平洋にあり、次の年の3月までには西部太平洋に達する、西への位相伝播がみられる。
LHFの月々の変動を規制している力学的および熱力学的プロセスの相対的な重要性を、東部太平洋と西部太平洋の二つの経度断面で調べてみると、東部太平洋ではcold tongue域の北を除き、湿度差の変動(熱力学的プロセス)が主としてLHFの年変化に重要であると考えられる。一方、西部/中部太平洋のLHFには海上風の風速変動(力学的プロセス)がより重要である。

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© 社団法人 日本気象学会
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