気象集誌. 第2輯
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1998年6月26日に九州西部で見られた地形性降水バンドに関する解析と数値実験
吉崎 正憲加藤 輝之田中 恵信高山 大小司 禎教瀬古 弘荒生 公雄間辺 一雄X-BAIU-98観測グループ
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2000 年 78 巻 6 号 p. 835-856

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抄録
X-BAIU-98の特別観測期間中の1998年6月26日に九州西部の長崎半島から北東方向に伸びる地形性降水バンドが観測された。ここでは長崎ラインと呼ぶ。長崎ラインの中の対流セルは、水平スケール5kmぐらいで寿命は40分ぐらいであり、約10ms-1の移動速度で南西から北東に動いた。対流セルの高さは北東側ほど高くなっていた。長崎ラインのまわりでは、下層には湿潤で対流不安定な大気があり、地上付近は南寄りの風で900hPaから500hPaまでは15~20ms-1の南西風の鉛直シアが大きい風の場が見られた。
気象庁領域スペクトルモデル(RSM)と気象研非静力学雲モデル(NHM)を用いて長崎ラインの再現実験を行った。RSMは九州西部に弱い降水域を再現しただけであったが、NHMは長崎バンドのいろいろな特徴をよく再現した。山岳、湿度、風分布に関する感度実験から、長崎ラインの形成には、湿潤で対流不安定な下層大気、メソスケールの収束、高さ3-4kmに南西風のジェットを持ち下層で鉛直シアが大きいような風の場が必要であるのがわかった。こうした環境場において、長崎半島の山は低いにも関わらず線状に組織化した降水系を作ることができた。
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