2019 年 38 巻 2 号 p. 221-239
災害に遭うことで被災者がコントロール感を喪失し,無力感や不安感を抱くことが報告され ており,これから立ち直るために他者を支援することが有効であると言われている。そこで本 研究では小学生を対象とした予防教育としての防災心理教育プログラムを開発し,小学校 5 ・ 6 年生230名を対象に実施して,効果検証を行った。本プログラムでは,児童が1他者支援行動 の動機づけを高め,2他者支援行動によりストレスが回復することを理解し,3共助の大切さ を知ることをねらいとして, 2 つの課題を行った。課題 1 では他者支援行動の行動随伴性の言 語記述を訓練し,課題 2 では災害後の共助についてグループで話し合わせた。授業の実施前後 に質問紙調査を行い,災害に関する認知を測定した。質問紙の分析の結果,プログラムの実施 後に自己効力感と反応効果性が向上し,脅威の深刻さが低下することが明らかとなり,他者支 援行動の動機づけにポジティブな影響を与えることが示唆された。この結果から、本プログラ ムは他者支援行動の動機づけの向上に寄与し得ると期待される。