自然言語処理
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論文
音声認識を用いた言語能力自動測定システム“言秤”の構築
宮部 真衣四方 朱子久保 圭荒牧 英治
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2018 年 25 巻 1 号 p. 33-56

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抄録

言語に関する能力を,客観的かつ自動的に把握する需要が高まっている.例えば,近年,日本において認知症は身近なものとなっているが,認知症は,言語能力に何らかの特徴が表出する可能性があることはよく知られている.言語能力を測り,それらの兆候を捉えることができれば,早期発見や療養に役立つ可能性がある.また,現在,多くの留学生が日本語教育機関において日本語を学んでおり,学習者の習熟度に対し,適切な評価を与えることが各教育機関に求められている.しかし,書く能力や話す能力の評価は,主に評価者の主観によって行われており,評価者によって判断に揺れが生じうる.機械によって自動的かつ客観的に言語能力を測定することができれば,評価者による揺れの生じない評価の一つとして活用できる可能性がある.これまでにも,言語能力の測定に関する取り組みはあるものの,いずれも人手を介して測定を行うためコストが高く,気軽に測定することは難しい.そこで本研究では,手軽に言語能力を測定可能なシステム「言秤(コトバカリ)」を提案する.本提案システムでは,(1) 音声認識システムの組み込み,および (2) テキストデータから定量的に言語能力を測定する指標の採用を行うことで,従来人手で行っていたテキスト化および言語能力スコアの算出を自動化し,コストの軽減と手軽な測定を実現する.また,「被測定者自身による自己把握・状況改善(用途 1)」および「被測定者以外による能力の高低の判断(用途 2)」という観点から,言語能力スコア(Type・Token 比)算出における音声認識システムの利用可能性について検証を行った.書き起こし結果および音声認識結果から得られる言語能力スコアは異なるため,閾値との比較のような,単純な言語能力スコアの対比による能力の高低の判断(用途 2)は難しいことがわかった.また,同一時期に複数回測定し,書き起こし結果および音声認識結果から得られる言語能力スコアの相関を調べたところ,集団としては相関が見られなかった.一方,個人で分けると,相関が見られる発話者と見られない発話者がいることがわかった.相関が見られる発話者については,被測定者の言語能力スコアを継続的に測定し,その変化を観察することによる能力の判断(用途 1)や言語能力の現状把握・維持・改善(用途 2)ができる可能性が示唆された.

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© 2018 一般社団法人 言語処理学会
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