2003 年 10 巻 5 号 p. 23-40
本稿は, 「思い込み応答」戦略を取り入れた大語彙音声対話インタフェースを提案する. この戦略は, 人間同士の対話において発話対象が広範囲に及ぶ場合, 聞き間違えにくい対象と間違えやすい対象が存在することに着目したもので, 聞き間違えやすい対象を誤認識しても利用者にストレスを与えないことを利用している. 大語彙として16万種の個人姓に焦点を当て, 音声認識精度と語彙網羅率の観点から, 聞き間違えてはならない10,000種の思い込み対象を選択できた. 更に, 思い込みが外れた場合への対応として, 思い込みの結果を利用者に応答として提示している時間を利用して, 思い込み範囲外の残りの姓を対象とした裏認識処理を並行して進める仕組みを提案した. 市販の認識エンジンを利用して, この仕組みと思い込み応答を組み合わせた個人姓確定インタフェースを実装した. 思い込み応答は, 現状の音声認識技術を用いたインタフェースにおいて, 入力対象が大語彙であってもストレスを与えない結果を利用者に提示できる戦略であることを確認した.