自然言語処理
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語彙間の主観的な類似度による感動語の分類
大出 訓史今井 篤安藤 彰男谷口 高士
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キーワード: 感動, 感情, 評価, 語彙分類
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2007 年 14 巻 3 号 p. 81-97

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抄録

日常生活の様々な体験において, その体験の素晴らしさを表現する言葉として, 『感動』という言葉がしばしば用いられる.感動とは, 『美しいものや素晴らしいことに接して強い印象を受け, 心を奪われること』 (大辞林 (松村1995)) であり, 体験に対する肯定的な評価であると共に, 記憶の定着や感情の喚起を伴った心理状態の大きな変化である.感動を喚起する対象としては, マスメディアが提供するドラマや映画, 音楽などの割合が高いとされている (三菱総合研究所2003).しかし, 感動という心理状態の定義については, 研究者の中でも曖昧である.
我々の目的は, 放送番組の品質評価, 特に音の評価に, 『感動』をキーワードとした評価指標を導入するために, 感動という心理状態を明確にすることにある.まず, アンケート調査を実施し, 感動という言葉で表現される体験と, 感動を表現する言葉 (以下, 感動語) を収集した.次に, 感動語同士の一対比較による主観評価実験を行い, 感動語から連想される心理状態の類似度を求めた.他の感動語との類似度によって表現される類似度ベクトルの距離に基づいて, 感動語の分類を行った.その結果, 感情とは, 特定の感情そのものではなく, 大きく心が動かされたという体験に対して, 肯定的な印象を持っているという個々の心理状態の総称であり, 感動という心理状態が, 感動の対象と感情の種類, 感情の動きの組み合わせによって分類できることが分かった.

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