本稿の目的は自然言語の時間の相-アスペクト-に対し, 個別の言語から独立した論理的意味を与えることである. 近年のアスペクトの意味論では, アスペクトは共通のイベント構造に対してその異なる部位にレファランスを与えるものであると説明される. 本稿でもまずこの理論を概観するが, その際アスペクトの形式化において常に問題となる用語および概念の混乱を, 本稿で扱う範囲で整理・統合する. 次に従来的な点と区間の論理に代わってアロー論理を導入し, アローを両端が固定されない向きをともなった時間区間であるとしてアスペクトの解析に適用する. アローを含む動的論理はそれ自身既にアローとその端点の関係が含まれる上に, 論理の側で順序や包含の関係が表現できるために, 従来的な述語論理によるアスペクトの形式化に比べてはるかに簡潔な表現が可能である. さらにアローと時点の関係をつけることで, 時間的に束縛されていない事象の原型がアスペクトを伴う表現にシフトされる過程を動的な推論規則として説明できる.