自然言語処理
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確率的判定尺度を用いた比喩性検出手法
桝井 文人福本 淳一椎野 努河合 敦夫
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2002 年 9 巻 5 号 p. 71-92

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抄録

本論文では, テキスト中に出現する比喩表現を認識するために, 確率的な尺度を用いて, 概念 (単語) 間の比喩性を検出する手法について述べる. 比喩性を検出するための確率的な尺度として, “顕現性落差” と “意外性” を設定する. “顕現性落差” は, 概念対を比較したときに, クローズアップされる顕現特徴の強さをはかる尺度であり, 概念同士が理解可能か否かの判断に用いる. “顕現性落差” は, 確率的なプロトタイプ概念記述を用いて, 概念の共有属性値集合が持つ冗長度の差で定量化する. “意外性” は, 概念の組み合わせがどれほど稀であるかをはかる尺度であり, 概念同士が例示関係であるか否かの判断に用いる. “意外性” は, 単語間の意味距離を用いて定量化する. 二つの尺度を併用することによって, 比喩関係を持つ概念対, すなわち, 比喩性の判定が可能となる. 二つの尺度を計算するために, コーパス中から抽出した語の共起情報を利用して知識ベースを利用する. 両尺度を用いた比喩性検出手法を検証するために, 1年分の新聞記事コーパスから構築した知識ベースと, 比喩関係・例示関係・無意味の各単語対が混在するデータ100組を用いて, 単語対の判別実験を行った. その結果, 70%以上の適合率で比喩関係単語対が判別できることがわかり, 本手法の有効性が確認できた.

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