Neuroeconomicsと呼ばれる研究分野は神経科学と経済学や動物行動学などの行動科学との融合から目覚ましい発展を遂げてきた.この基礎にあるのは,脳が果たす機能を「行動選択に影響を及ぼす変数(value)を設定し,その期待値を,選択を通して最大化する」ことだと捉えるという考えであった.さらに学習理論などから,このvalueは行動の結果により更新されていくと考えられてきた.しかし最近,この単純なvalueの概念について見直しを迫るような研究が相次いで発表されてきている.今回は筆者自身の研究を中心に,行動の選択とvalueの更新の関係性に焦点をあて解説してみたい.