“認知”機能は,複数の皮質および皮質下の領域にまたがる広範囲に分散した神経回路の計算処理によって生じる.近年,神経細胞の活動を一時的に活性化あるいは抑制したり,複数の脳領域から数百から数千の神経細胞の神経活動を同時に記録する新しい手法の開発によって,分散する脳ネットワークのよる情報処理メカニズムを調べる技術は大幅に向上してきた.しかし,これらの手法を最大限に活用し,認知機能を支える神経機構を解明するためには,行動実験を用いて,関連する脳ネットワークを適切に従事させることが重要である.この総説では,近年の技術革新の紹介とともに,齧歯類を用いた認知行動実験のデザインの仕方に焦点を当てて論ずる.これらのアプローチは認知機能に関連する神経回路を同定するだけでなく,神経発達障害において認められる認知機能障害の機序の解明にも役立つ.