看護理工学会誌
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実践報告
弾性ストッキング装着による経皮的酸素分圧の変化:心臓手術を施行した2症例
森脇 裕美上野 高義
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2022 年 10 巻 p. 31-36

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抄録

 本研究では,心臓の手術を施行し弾性ストッキングを装着した2症例に対し,下肢の圧迫部位の経皮的酸素分圧(以下,TcPO2)を測定し術前後の組織血流状態の変化を明らかにした.対象者1は術前・術後5日目・術後7日目,対象者2は術前・術後6日目に測定し,それぞれ着用前・着用10分後・20分後の値を記録した.結果,心臓の手術を受ける患者は術前から下肢のTcPO2の値が低いことや,術後は弾性ストッキング装着でより圧迫の影響を受けやすい状態であることが明らかになり,回復期の移行時期であっても医療関連機器圧迫創傷(以下,MDRPU)のリスクが高くなっていることが推測された.さらに,術後の体重増加に着目した場合,体重増加が著明な対象者2のほうが,術後の弾性ストッキング装着によるTcPO2の低下が大きく,浮腫により圧迫の影響を受けやすい状態であることが考えられた.弾性ストッキング着用時のMDRPU 予防ケアとして,術後の弾性ストッキング装着時は連続した着用時間の短縮の必要性が示唆された.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→大学病院において,弾性ストッキング着用によるMDRPU の発生率は上位を占めています.しかし,臨床の看護師が実施している弾性ストッキングの着脱ケアは個々の判断に委ねられている現状があることから,今回は実際に周術期に弾性ストッキングを着用する術後患者の下肢の皮膚の組織血流状態を検証しました.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 弾性ストッキングの着脱ケアの指標を示していくための基礎データとすることで,MDRPU の予防に貢献できると考えています.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→今後は,周術期を通して弾性ストッキング着用中の経日的な下肢の組織血流状態の検証が課題となっています.そのため,患者への負担が少なくより簡便に組織血流が測定できる装置の開発が望まれます.

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