看護理工学会誌
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原著
硬膜外麻酔導入時に生じる皮膚内ひずみの針挿入方向微分の有限要素解析の試み
苗村 潔
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2018 年 5 巻 2 号 p. 118-126

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抄録

 硬膜外麻酔のために穿刺する針の先端が鈍なため, 針貫通までに皮膚が伸展変形して, 痛みを伴う. 本研究は痛みの小さい針開発に向けて, 針による皮膚貫通前に皮膚内に生じ, 可視化が困難な痛覚刺激に関係するひずみの針挿入方向微分を有限要素解析により示して, 痛みの強さに関係する因子を定量的に比較する一方法を提示することを目的とした. 硬膜外穿刺シミュレータの模擬皮膚に対する穿刺実験と, シミュレーションモデルによる有限要素解析を行った. 0.8mm/sの速度で穿刺実験を行い, 穿刺反力を計測し, 模擬皮膚の変形画像を撮影した. 有限要素解析にはFemtet®を用い, 0.5mmの大きさで要素分割して, 針先端再現モデルに実験と同じ変位を入力し, 反力, 伸展変形量, ひずみを計算した. その結果, 針を模擬表皮へ0.5s間, 0.4mm分挿入した初期の反力は実験値との誤差が3.6%, 模擬皮膚とシミュレーションモデルの伸展変形量の誤差は0.08mmで有限要素解析が実験を再現できていると考えられた. また, 皮膚表面と内側に0.5mmの位置での圧縮ひずみの針挿入方向微分の絶対値の最大値が, 硬膜外穿刺針を0.8mm分, 挿入したときに0.49/mm, 1.2mm分挿入した時に0.54/mmと求められた. 同じ条件下で, 針のかわりにゴム硬度計の測定子について求めた圧縮ひずみの針挿入方向微分の絶対値の最大値とくらべて1.5倍ないし1.1倍大きかった. よって, 痛みの違いを被験者の感覚だけによらずに比較できることが示唆された.

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