原子力バックエンド研究
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総説
地層処分システムと微生物
-地下研究施設における微生物影響研究の考え方-
吉田 英一大貫 敏彦長沼 毅
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2007 年 14 巻 1 号 p. 31-42

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抄録

 地層処分において遭遇する地下環境は, 微生物をも含む岩石と地下水との反応による複合環境の世界と言える. そして, そこでの微生物の分布や生息の様子は, 堆積岩系や結晶質岩系といった岩体の形成プロセスに深く関与したものであることが示されつつある. 地層処分システムは, このような地下環境との共存システムとして構築される必要がある. しかしながら, 微生物の影響や安全評価に対する考え方については, 欧米をはじめ様々な観点から議論されてきているものの, 処分場建設から閉鎖後に至る処分環境の時系列的変化に伴う微生物活動の予測や, バリアシステムへの影響という観点からはほとんど論じられていない. 地下に存在する微生物 (群集) は, 処分場建設~操業~閉鎖に至る化学的および物理的な地下環境の変化に伴って, 大きくその様相を変化させる可能性がある. これらは, 地下水‐鉱物 (材料) ‐微生物の経時的複合反応によってもたらされるものである. したがって地下研究施設においては, 我が国の地質環境下での微生物が活動する「場 (地下空洞掘削によってもたらされる時系列変化と複合環境) 」を意識した微生物影響に関する研究を進めることが不可欠と考えられる.

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© 2007 社団法人日本原子力学会 バックエンド部会
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