原子力バックエンド研究
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研究論文
地層処分された高レベル廃棄物による臨界現象発生のメカニズムとその可能性
安 俊弘Ehud GreenspanPaul L. Chambré
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1998 年 4 巻 2 号 p. 3-20

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抄録

  地下水で飽和した花崗岩中に40,000本の高レベル廃棄物ガラス固化体を処分した場合の自己触媒的臨界シナリオの可能性とメカニズムについて解析を行った.解析は,理論上最大の濃集量と最小の臨界質量を得られるよう保守的に行った.
  理論上の最大の濃集量を得られるよう,他の画化体の干渉を受けずに各固化体から核種が放出され地下水流下流に設定した濃集点に集積すると仮定して物質輸送/濃集モデルを立てた. ウランが花崗岩地下水中に溶けにくく,かつ,吸着により輸送が大きく遅延される場合,たとえ,処分場に埋設された40,000本の固化体から放出された核種がすべて1点に濃集すると仮定しても,ウランの濃集量は高々数モル程度である.しかし,ウランの花崗岩中での動きやすさが仮定した幅の最大限にある場合,1,000mの輸送距離でも約1モルの12%濃縮ウランを1本の固化体から供給できる.この濃縮度は再処理段階におけるウランとプルトニウムの回収率(それぞれ99.3%と99.85%と仮定)に依存する.
  濃集点の花崗岩空除率が30%のとき,過減速状態の臨界のためにすくなくとも280kgの12%濃縮ウランが必要である.濃集が花崗岩亀裂に沿うような非均質な場合,温度に対する正のフィードバックメカニズムが存在する.また,母岩の空隙率が重要なパラメータであることがわかった.
  このシナリオの発生確率を定量的に評価するためには,母岩の空隙率,核種移行経路の形状,核種濃集の地球化学的メカニズムなど処分サイト特有の情報が必要であるため,サイト選定のための特性調査/性能評価には臨界安全評価を加えることが望ましい.

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© 1998 一般社団法人日本原子力学会 バックエンド部会
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