抄録
本稿は、オウブンシャホールディング事件に係る判決を端緒として、法人税法22条2項における「取引」の意義や第三者有利発行に係る既存株主への課税等について考究したものである。同項における「取引」とは、私法上の取引を基本としつつも会計慣行上取引と観念されるものも包含する概念であると解された。法人税法は、株式自体を譲渡性のある財産権を内容とする資産と観念し、株式の譲渡をもって株式に付帯している株主の権利(持分権)の移転と観念するのであって、持分権を株式から切り離して株式とは別個独立に譲渡することを予定していないと解された。第三者有利発行の行為では、株主間の「株式の譲渡」が存在せず、かかる行為に伴う事象は「持分割合の変動」であって、また、それを「取引」と観念する会計慣行も存しないことから、それは私法上の取引でも、会計慣行上の取引でもなく、したがって、同項における「取引」には該当しないと解された。