日本臨床生理学会雑誌
Online ISSN : 2435-1695
Print ISSN : 0286-7052
原著
鉄道運転士における睡眠時無呼吸症候群の実態と生活習慣病の関連性
加藤 貴雄加藤 和代生沼 幸子佐藤 恭子西村 芳子小宮山 英徳金井 好恵相澤 紗希佐藤 美恵千島 功子
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2022 年 52 巻 1 号 p. 35-43

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抄録

 背景:運転業務従事者における睡眠時無呼吸症候群は,居眠り運転等を引き起こす重大なリスクであるが,生活習慣病との関連性に関しては十分に解明されていない.

 対象と方法:東武鉄道(株)社員のうち鉄道の運転に従事する者(運転士)1494 名を対象としてPSG 検査を行った結果と,定期健康診断結果のうち生活習慣病に関連する年齢,BMI,血圧値,尿酸値,HbA1c 値,LDL-C 値,中性脂肪値,γGTP 値,eGFR 値および血清ヘモグロビン値の10 項目との関連性について解析した.

 結果:1)SAS と診断されたのは1494 例中797 例(53.3%),内訳は軽症385 例(25.8%),中等症105 例(7.0%),重症307 例(20.5%)で,年代が高いほど軽症以上の有病率および重症SAS の頻度が高かった.2)SAS 重症度と肥満者(BMI ≧ 30)の割合の間に高い相関が見られた(r=0.95).3)SAS を有する例では高血圧,高血糖,高尿酸血症および多血症を合併する者の割合がそれぞれ有意に高かった.4)中等症および重症SAS 例における多変量ロジスティック回帰分析では,肥満と高血糖がそれぞれ独立した危険因子であると判定された.

 結論:鉄道運転士において各種生活習慣病指標とSAS との関連性を調べたところ,加齢,肥満,高血圧,高血糖,高尿酸血症,多血症などと関連があることがそれぞれ示された.中でも肥満と高血糖が中等症および重症SAS 発症の独立した危険因子であった.

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© 2022 日本臨床生理学会
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