産業医学
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タールエポキシ樹脂加熱作業により発生する毒性ガスの分析
坂井 公荒記 俊一中野 洋一郎佐田 文宏荒木 高明
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1994 年 36 巻 6 号 p. 412-419,A125

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抄録
タールエポキシ樹脂塗料の加熱で発生するガスに曝露した2人の作業者に急性の末梢神経症状がみられた.作業所の空気中ガス成分を推定するため,ガスクロマトグラフー質量分析計により加熱・燃焼ガス成分を分析した.エポキシ樹脂の加熱で発生する主要な毒性ガスはシアン化水素,フェノール類,ベンゼン,ナフタレンなどであった.タールエポキシ樹脂で表面塗装された鉄板1 m2から1,000℃で2.4 gのシアン化水素, 9.6 gのベンゼン, 1.2 gのナフタレンが発生した. 700℃ではフェノールとイソプロピールフェノールがそれぞれ3.7 g, 0.57 g発生した.これらの結果と加熱した鉄板の表面積から計算すると,作業所の空気中のシアン化水素,ベンゼン,フェノール濃度はそれぞれ16, 64, 24 mg/m3となりうることが推測される.今回の作業者の症状の一部は末梢神経症状を含めこれら化合物の単独あるいは複合した作用に関連すると考えられる.
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© 社団法人 日本産業衛生学会
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