1994 年 37 巻 8 号 p. 671-678
アート·ドキュメンテーションの分野におけるメディアは, 色や形で成り立っている視覚情報とそれに関する文字情報を伝達し, 保存するための媒体のことである。本稿では, アート·ドキュメンテーションのメディアの果たすべき役割を考察し, 様々なメディアの特徴を定義づける。まず「イメージ」と「ことば」の相互関係に着目し, メディアを体系的に把握する必要性を指摘する。次に視覚情報メディアの発生と流布を歴史的にたどり, それらが社会的構造に及ぼした影響を技術進歩との関連から考察する。さらに様々な視覚情報を分析し, 視覚情報の複製品が以前より注目され「オリジナル」と「コピー」の区別が意味をもたなくなってきている社会的変容について述べる。