2011 年 54 巻 5 号 p. 233-242
筆者はトムソン・ロイター社の引用索引関連データベースを用いて,2003年に2000年時点におけるわが国の学術論文の海外誌への掲載状況等の調査を行った。そこでは「海外流出率約80%」という結果が得られ,国立情報学研究所ではその「回復」のための事業を展開してきた。今般この種の指標に関する,より大規模な統計調査分析を実施し,1994年~2009年の16年間にわたる各種時系列値を得ることができた。その概要はすでに報告したところであるが,さらに深く検討するべき種々の課題が浮上してきている。そこでまず本稿では,わが国の学術論文の品質の動向に注目し,論文数の変動と合わせて,いわば質と量の両面から分析して現状を点検し,今後検討するべき論点の抽出を試みる。なお,品質指標としては,「インパクト・ファクター」に統計的処理を加え,不偏で比較可能な品質指標を編成し,国別,分野別に時系列的な質と量の趨勢を明らかにし,各々の特徴について考察する。