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Introduction to legal research for R&D and business : Part 4: Commentaries of laws and regulations
Noriko MURAI
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2013 Volume 55 Issue 10 Pages 754-759

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1. はじめに

今回は,前回の「法令の条文」リサーチを踏まえて,「法令の解説」資料について実例を示しながら探し方を説明する。

法令は一定のルールのもとに制定され,総合的・統一的体系をなし,その大半が相互に関連しながら改正され,実社会に生起するほとんどの事件・事項に対処するべく機能している。前回説明のあった多種多彩な法令集・法令データベース(DB)・法令情報にそれらが収録されており,用途に応じて利用されているが,特定の法令を突き止め,読み,正確に理解することが容易でない場合も多い。該当する条文がどの法令にあるのかわからない,法令が長くて条文の関係がわかりづらい,改正状況や施行状況が把握できないなど数え上げたらきりがないが,そのような難問に対処する方法のひとつとして法令解説資料の利用を勧めたい。さらに,それらは難問解決のみでなく,法令のより正確な理解のためにも利用できる。前回の5章「法令をなぜ探すのか-索引としての法令」では「法令の文言は~中略~法案の趣旨説明,立案担当者の解説,判例,学説等を読み合わせて理解する1)」ことの重要性を指摘している。

一次情報としての法令・判例以外の法情報はすべて解説資料といえなくもないが,そのなかでも法令解説に特色のある資料を紹介し,探し方について実例を交えて説明していきたい。

<事例>

介護に関わる仕事をしていますが、最近の法改正で介護士が痰(たん)の吸引ができるようになったと聞いています。何という法令のどの条文ですか。その改正をわかりやすく説明している資料はありますか?

介護職の医療行為は医師による「医業」の独占に反するために禁止されてきたが,介護現場の実態は必ずしも原則通りにはいかず,対応はさまざまであり,法制度的にも条件付きで徐々に認められる方向に進んでいると聞く。果たして介護職の痰の吸引は業務として認められるのか。

2. 法令情報を探す

2.1 改正された法令

改正された法令は何か? その条文はどこか?

早速前回の記事で紹介のあった総務省の「法令データ提供システム」DB(http://law.e-gov.go.jp/)の法令用語検索を利用してみる。「介護 痰 吸引」(AND)のキーワードで検索しヒットした5個の法令のなかに「社会福祉士及び介護福祉士法」(以下「社会福祉士法」と略す)の第2条第2項,および第48条2から10に関連の条文がある。誌面の都合によりその一部となるが,以下に条文を掲載する。

第2条第2項 この法律において「介護福祉士」とは,第42条第1項の登録を受け,介護福祉士の名称を用いて,専門的知識及び技術をもつて,身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて,医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い,並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。

この法令検索は成功例だが,法令全文からの検索は時としてヒット件数が多く,結果を吟味する手間がかかるし,痰をひらがな入力するとヒットしないなど,検索に工夫を要する場合もある。その場合はWebサイト検索なども併用すると効果的である。キーワード検索「介護士 痰吸引」(AND)で上位にヒットするのが厚生労働省のWebサイト「喀痰吸引等の制度について」であって確度は高い。

2.2 改正をした法令(一部改正法を探す)

法令条文が見つかり,次なるステップはその条文を解説してくれる資料の探索である。どのような経緯で出来上がったのか,背景となる社会的・経済的な動きや今後に与える影響は?などが知りたい。改正についてのリサーチを始めよう。

改正をした法令を探すためには,改正された法令が掲載されている法令集を参照するのが確実である。

この法令は六法の中では最も収録数が多い『六法全書』(有斐閣)にも収録はないが,分野別の六法,例えば『社会福祉六法』(新日本法規出版)や『社会福祉小六法』(ミネルヴァ書房)などには収録されている。

法令集の「社会福祉士法」の第2条第2項の後に(平成23年法律72号本条改正)と記載がある場合は,この法令番号を手掛かりにして,法令公布誌である『官報』誌や,最大限過去2年分の法律・政令条文が掲載されている「首相官邸」Webサイト上の「官報」(http://www.kantei.go.jp/jp/kanpo/index.html)で一部改正法の全文を読むことができる。また国立国会図書館の「日本法令索引」DB(http://hourei.ndl.go.jp/)の「制定法令」タブ(一部改正法の探索はこのタブを使用)で「平成23年法律72号」と入力しこの改正法が「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」であることがわかり,衆議院Webサイトの「制定法律」で全文を読むこともできる。この一部改正法は,本則7条,附則52条からなり,Webサイト上でも60頁を擁し,54の法令を一度に改正している複雑大部な法令である。このような法令のなかから該当する改正箇所を見つけ出すのは容易ではない。解説資料の有用性はここにもある。

2.3 施行状況を調べる

現時点で特定の法令・条文の効力があるか否かを知ることは実務の世界では特に重要であろう。事例でいえば一部改正法の附則の部分に「平成24年4月1日から施行する」とあるが,続けて「ただし,次の各号に掲げる規定は,当該各号に定める日から施行する」とあり,施行が段階を追ってなされていたことがわかる。改正された各法令にもそれぞれ経過措置があり,本則にも特例規定があるなど,改正箇所の効力を正確に把握するのは手間がかかる。そもそも施行年月日の決め方はさまざまで,公布とともに施行する,特定の日時に施行するなどの方法もあるが,一定の期間内に政令などに委任して決めさせる場合もある。国民生活に直接関わるような新法律・改正は知識の浸透や準備期間確保のための期間が必要であり,施行日も弾力的に決定されるのが望ましいためであろう。その際は施行のための政令が公布されているかどうか調べる必要が生じる。『官報』誌の目録で政令部分を調べるか,「官報検索情報サービス」DB(有料)を検索して調べることができるが,適切な解説資料を読むことによって施行情報を調べることも可能である。また,衆議院・参議院で附帯決議がなされる場合もある。今後の推移を量る上でも重要となるが,解説資料のリサーチはそれらの情報をつかむ機会となる場合もある2)

3. 法令の解説資料

3.1 『官報』には「あらまし」が掲載される

『官報』誌には「本号で公布された法令のあらまし」なる記事が掲載され,新法令・改正法の要点が簡潔に記載されている。事例の法令の場合も,平成23年6月22日号外131号,3頁にこの法令の主な改正点が掲載されており,本則5条が「社会福祉士法」の改正であることがわかる。

3.2 所管省庁のWebサイト

上記「あらまし」の記事はインターネット版「官報」の先頭頁(または2頁以降)に飛ぶことで読むことができるし,同じ内容の記事が所管官庁のWebサイトに掲載されることもある。所管官庁Webサイトにはそのほか,法令の要綱,新旧対照表,施行年月日の表など法令情報がわかりやすく掲載されていることが多い。事例で探している一部改正法については厚生労働省Webサイトに「介護サービス基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」と題するPDFファイルがあり,それまでの経緯から複雑な一部改正法までを図や表で説明している。そのなかの「介護人材の確保とサービスの質の向上」のページでは介護士の痰の吸引等についての説明を加えている(http://www.mhlw.go.jp/english/policy/care-welfare/care-welfare-elderly/dl/tp01.pdf)。

3.3 立法情報を探す

「日本法令索引」DBでは法令の成立・改正などの履歴のほかに,立法時の情報を国立国会図書館の「国会会議録検索システム」DB(http://kokkai.ndl.go.jp/)へのリンクで探すことができる。事例のリサーチでは,衆参両議院の厚生労働委員会・本会議における発言者名,発言内容に至るまでその審議などを詳細に調べることができる。国会の会議録注1)のDB版だが,冊子と異なり検索機能がある。PDF版では議会での配布資料を読むこともできる。法令のキーポイントは立法趣旨や議論の内容にこそ読み取れるといえるだろう。

3.4 立法担当者の解説記事を読む

重要な新法令の立法や法令の改正があった場合,関連の解説・分析・批評などが発表・刊行されることが多い。図書や法律雑誌の記事として刊行されるが,ここではその中で立法や改正後,短期間で刊行される立法担当者による解説記事を探す方法を紹介する。文献を探すためのDBは複数あるが,最も効率的なDBである龍谷大学図書館の「新法・改正法解説記事書誌情報検索(R-LINE)」(http://www.ryukoku.ac.jp/apps/opac.lib.ryukoku.ac.jp/rline/)を紹介する。

このDBの優れている点は(1)収録を法令の解説資料に限定しているため効率的なリサーチができる,(2)特定の法令のみでなく,特定の一部改正法も検索できる,(3)インターネット環境の下,無料で利用できるなどであり,法令の解説記事を探すには最も簡便なDBである。事例で探す一部改正法については法令番号入力かまたは「介護 改正」(AND)のキーワード検索で『法令解説資料総覧』(第一法規)『時の法令』(雅粒社)注2)『地方自治』(ぎょうせい)の3誌に解説記事が掲載されていることがわかる(2012年10月6日検索)。前2誌は法律雑誌のなかでも特に法令の解説誌としての特色がある。このような立法担当官の記事のほかに雑誌『ジュリスト』(有斐閣)では改正に対応する特集として「求められる介護サービスと法の取組」を組んで,石橋敏郎「介護保険法改正の評価と今後の課題」など研究者の論文を,改正から5か月後の11月15日号(1433号,p.8-14)に掲載している。後述の雑誌記事DBで検索できる注3)

図1 「新法・改正法解説記事書誌情報検索(R-LINE)」の検索画面

3.5 逐条解説書(コンメンタール)を利用する

改正された法令について,条文を詳しく説明してくれる資料はないだろうか。法律図書・雑誌のなかには「コンメンタール」「注釈」「条解」「注解」などのタイトルが付されている資料がある。タイトルに特別記してはいないが,同様の編集がなされている単行本もある。特定の法令が条文順に配置され,その条文の立法趣旨や成立の経緯,社会的背景,関連のある判例(判例についてはこのシリーズでも連載が予定されている),学説などの情報がわかる。法改正に合わせて改版される場合もあるが,多巻ものなど大部な図書は編集・刊行に時間がかかり,最新の改正が反映されていない場合もあるので,奥付をチェックしておきたい。

事例の場合は介護職による痰の吸引が医師法に違反しないかどうかの問題があった。刑法の特別法をまとめて解説している『注解特別刑法』(青林書院新社)5巻1・2の医事・薬事編に医師法のコンメンタールがあり,該当の条文は以下である。

第17条 医師でなければ,医業をなしてはならない。

この巻は1992年版が最新で,今回の改正を反映してはいないが,医師法の基本的な解釈はわかる。

なお,刊行の態様として,刑法分野のコンメンタールでは特別法については別に発刊されているが,有斐閣の『注釈民法』には,一般法である民法のみでなく,対応する特別法の注釈も収録されている注4)。改版を重ねて現行法を反映させているのは,雑誌形式で刊行されている日本評論社の『基本法コンメンタール(別冊法学セミナー)』(現在,『新基本法コンメンタール』として継続)であるが,会社法,民法など主要な法令が主である。より迅速に法改正に対応するコンメンタールとして同社の「インターネットコンメンタール」がある。民法・刑法・刑事訴訟法・民事訴訟法・会社法編があり,関連法令や判例へのリンクがあり,更新は年1回で内容が新しい。

事例に出てきた「社会福祉士法」の改正に対応したコンメンタールはないが,以下の①の図書で改正法の全体を把握し,②の図書で参考資料が読める。今回紹介する各種DBの検索でヒットする。

  1. ①   『速報!改正介護保険法-平成24年4月からの介護保険はこう変わる』(中央法規出版,2011)
  2. ②   『介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第50号):参考資料』(衆議院調査局厚生労働調査室,2011)

一橋出版より『~法の解説』なるタイトルの小型本がシリーズで刊行されていたが,介護保険法について最新版は2004年でシリーズ本体も現在は刊行を継続していない。

4. 法令の解説記事の検索方法

以上で紹介した解説資料の検索について説明する。検索ツールとして3.4で「新法・改正法解説記事書誌情報検索(R-LINE)」を紹介したが,ほかに利用できるDBは以下のとおりである。

4.1 雑誌記事のDBで探す

法令の解説記事は,全分野を対象として収録されている雑誌記事DBでも検索できる。学術論文の検索のために,国立情報学研究所(NII)の「CiNii Articles」DB(http://ci.nii.ac.jp/)を選択し「介護 たん 吸引」(AND)のキーワード検索で改正法について書かれた論文を探し出すことができる。また連想検索のできる「Webcat Plus」DB(http://webcatplus.nii.ac.jp/)などでキーワードを増やして,より広い検索を試みると以下のような学会発表での論文を見つけることもできる。

第33回医事法学会研究大会記録:シンポジウム/「いま,医行為を問い直す-静注,気管挿管,喀痰吸引」(日本医事法学会編『年報医事法学』第19号,2004)

法改正に対応するため,この分野の書籍や論文が量産されているが,多少過去のものであっても,以上の論文のようなターニングポイントとなる重要な論文をおさえておくことも,全体をとらえる意味で必要な場合もあるかもしれない。

雑誌記事を検索するDBは,ほかに国立国会図書館の「国立国会図書館サーチ」DB(http://iss.ndl.go.jp/)がある。本,記事・論文,デジタル資料,立法情報なども同時に検索できるのが特徴であり,同館の所蔵のほかに都道府県立などの公共図書館の蔵書も検索できる。

4.2 法律関係有料DB,分野別有料DBを利用する

法情報検索のための有料DBがある。第一法規の提供する「D1-Law.com」DBの「法律判例文献情報」は,法律関係の図書・雑誌論文・記念論文集収録の論文・署名入り新聞記事が検索できる。印刷体の『法律判例文献情報』も継続して刊行されている。法令・判例・文献を統合する同DBは法令の条文ごとの履歴検索もでき,関連文献の情報も調べることができる。本文が読める場合もある。事例の場合,現行法規検索で「社会福祉士法」を特定し,関連文献のなかから平成23年の改正に関する解説資料を選択することもできる。採録は網羅的ではあるがタイムラグがある。

日本評論社の「法律文献総合インデックス」では,同社発行の『法律時報』誌の巻末に掲載された文献月報と判例評釈の書誌情報が収録されている。同社は法律図書・法律雑誌の老舗出版社で法文献の情報を長年継続して提供してきており,戦前からの法情報も調べられる。

医学・医療関係では医学中央雑誌刊行会が国内医学論文DB「医学中央雑誌」を作成しており,「医中誌Web」(法人向け)「医中誌パーソナルWeb」(個人契約)というサービスを有料で提供している。事例の探索でも,前述「CiNii Articles」DBで検索した結果,「医中誌Web」DBへリンクする論文も数多くある。医学関係の定期刊行物約5,000誌から750万の論文情報を収録しており,書誌だけでなく,抄録の記載もあり,オンラインジャーナルにリンクする論文もある。また科学技術振興機構が提供する有料の「JDreamII」の「JMEDPlus」DBは,医学・薬学・看護系の文献情報を収録している。収録件数は現在約645万件で毎年約37万件を新たに収録している。学術誌・学会誌,研究報告,会議論文集から一般情報誌まで採録も広く,抄録の記載がある。

5. 新聞情報を利用する

新法令や法改正の公布は『官報』誌に掲載され同時にインターネット版「官報」でも読めるが,次に速報性のある情報は新聞記事である。すべての法令が記事として取り上げられるわけではないが,重要な法令の立法や改正についての情報は解説を含めて記載されることが多い。最近では検索機能を持つデジタル版の新聞も多数ある。事例について全国紙のほとんどが解説記事を掲載しており,改正に至る社会的背景などもわかり,時系列順に並べてみると推移もわかる。

  • (例)
  • 「介護職の医療行為禁止,法規定,現場と隔たり」(『朝日新聞』朝刊,2008-10-04)
  • 「介護職員のたん吸引12年度の実施厚労省目指す」(『朝日新聞』朝刊,2010-12-14)
  • 「訪問介護24時間対応 改正法成立,来春に施行」(『読売新聞』夕刊,2011-06-15)

6. おわりに

以上,法令の探し方から解説資料の紹介・検索までを,「介護職による痰吸引問題」を例として説明した。今後の読者のリーガル・リサーチの一助となることを期待する。

本文の注
注1)  国立国会図書館『衆議院会議録』『参議院会議録』『衆議院委員会会議録』『参議院委員会会議録』

注2)  雑誌『時の法令』Webサイト(http://garyusha.com/modules/bulletin/)には「時の法令検索サイト」があり,「介護保険法」OR「平成23年法律第72号」の入力で『時の法令』誌に掲載された解説論文情報がわかる。

注3)  新法令・新改正の解説記事を掲載している総合誌として,ほかに『法律時報』『法学セミナー』などがある。詳しくはいしかわまりこほか著『リーガル・リサーチ』第4版(日本評論社,2012)124-125p.

注4)  例として『新版注釈民法15』債権(6)には利息制限法,借地借家法などの注釈も収録されている。

参考文献
 
© 2013 Japan Science and Technology Agency
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