Journal of Information Processing and Management
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2013 Volume 55 Issue 10 Pages 785-789

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Googleが連邦控訴裁判所で公正使用を主張

Googleブック検索をめぐる訴訟は,昨年10月にGoogleと米国出版社協会(Association of American Publishers: AAP)の間で,和解に達したが,Googleと作家組合(Authors Guild)間の係争は継続中である。作家組合を集団訴訟の代表当事者と認めたChin判事の判断(vol.55, no.4の本欄にて既報)を不服として控訴していたGoogleは11月9日,連邦控訴裁判所に対し趣意書を提出した。その中でGoogleは,デジタルコピーは既存の書籍と競合するのではなく,新しいものを加えることであり,従ってスキャニングは,いわゆる変容的利用であって,著作権外使用の範疇に属すると主張している。ニューヨーク州南部連邦地方裁判所が10月に,HathiTrustを公正使用の範囲内であるとして,作家組合の訴えを却下した(vol.55, no.9の本欄にて既報)ことに後押しされた論拠である。また,スキャンされた書籍はほんの一部しか見ることができず,オリジナル書籍の市場を傷つけることはないとも論じている。作家組合は著作権を侵害された書籍1点につき750ドルの補償金を要求している。図書館著作権同盟(Library Copyright Alliance: LCA)は,Googleブック検索は研究者,学者,ライブラリアン,著作者にとって貴重な資源であるとして,Chin判事の判断を取り消すよう求めるamicus brief(法廷助言者による意見書)を11月16日に提出した。その論拠は,(1)集団代表訴訟の認証(class certification)は,公益を損なう恐れがある,(2)この訴訟は法律上や事実上の共通課題を提起しない,(3)公正使用を決定するために部分集合を利用するのは,実行不可能な解決策である。

(http://www.acrl.ala.org/acrlinsider/archives/6293)(accessed 2012-12-10).

Amherst College Pressが全出版物をオープンアクセスに

マサチューセッツ州のAmherst College(アマースト大学)が,人文科学と社会科学の分野における第一流の学者たちによる査読書籍に,オンラインでオープンアクセスを提供する新しいデジタル出版事業を開始することを発表した。Amherst College Pressは,大学のFrost Libraryに置かれ,従来の学術出版界が出版タイトル数を縮小しているこの時期において,とりわけ新しい出版パラダイムを受け入れる力のある学者からの原稿を勧誘する。イニシアチブを考え出したCollege Librarianの Bryn Geffert氏は,「私たちは,すべての書籍をオープンアクセス・モデル出版する最初の大学出版局となる」と述べている。Amherst College Pressは,著者に提供するものとして,(1)優れた編集支援,(2)他の学術出版社では得られないマルチメディア能力,(3)これまでは想像もできなかった読者層,の3点を挙げている。手始めに,政治学,文学,歴史,経済学,人類学などの一般教養科目分野の書籍が出版されるが,対象となる科目の詳細なリストは新ディレクターの到着を待って決定される。出版には,電子書籍リーダーに適したフォーマットが選ばれ,自由にプリントすることが可能である。プリントオンデマンドのサービスも視野に入っているが,印刷書籍の出版や配布に焦点を合わせるようなことはない。査読のための原稿受け入れは2013年夏までには開始されると期待されている。

(https://www.amherst.edu/library/press/news)(accessed 2012-12-10).

JSTORが3つの新プログラム開始を発表

1. Alumni Access Program

JSTORは,約50の公的・私的機関との間で,3年間にわたり実施されてきたパイロットプロジェクトを経て,高等教育機関の卒業生にもJSTORのアーカイブコレクションを利用させるAlumni Access Programを2013年1月から正式に開始することになった。年間利用料金(Annual Access Fee: AAF)の10%を支払うことにより,世界の高等教育機関がこのプログラムに参加することができる。現在42の機関が卒業生にアクセスを提供している。

2. 書籍プログラム

Harvard University PressやPrinceton University Pressなどの主要な大学出版局や,その他の学術出版社から発行される学術書籍を,JSTORのプラットフォームにもたらす書籍プログラム「Books at JSTOR」の開始が11月12日に発表された。提供される書籍は,JSTORがデータベースに持つジャーナルの中で,既に高度に引用されているもので,現在その数は15,000点を超え,毎月新しいタイトルが加えられる。これらは1冊ずつでも,分野別パッケージやカスタマイズ可能なコレクションとしても購入することができる。JSTORのプラットフォーム上には数百万に及ぶ書評と数十万の書籍引用があり,書籍,ジャーナル論文,批評などをクロス検索することが可能である。

3. Wikipedia編集者へのフリーアクセス提供

ボランティアであるWikipedia編集者が,参考資料として信頼できる情報源を得られるよう,JSTORがWikimedia Foundationに協力することが11月19日に発表された。これまでに合計すると10万件を超える記事を書いた,最もアクティブな編集者100名に対し,JSTORの全アーカイブコレクションへのフリーアクセスが提供される。1年間の試験期間後に,JSTORとWikimedia Foundationは,このプログラムの拡大を検討する。

(http://about.jstor.org/service/access-alumni)(http://about.jstor.org/news/new-chapter-begins-books-jstor-launches)(https://blog.wikimedia.org/2012/11/19/jstor-provides-free-access-to-wikipedia-editors/)(accessed 2012-12-10).

全国のメディア接触パターンを分類

博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所は11月27日,「全国47都道府県メディア接触分析」調査結果を発表した。これは,全国47都道府県に住む生活者の主要6メディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・PCネット・携帯ネット)への接触状況を分析したもの。同調査では,東京でネット利用が多く,沖縄ではラジオ利用が多いことがわかったとしている。分析結果は,生活者のメディアパターンを以下の5通りに分類している。1)カントリーマス(テレビ・新聞愛好層。メディア総接触時間も比較的長い。北海道,青森,長野,鹿児島など),2)ラジエリアン(ラジオの利用時間が極めて長い。沖縄県に特有の傾向),3)テレビラバーズ(メディア接触の中心がテレビ。ラジオやネットの利用は少なめ。人口下位6県が集中。鳥取,島根,高知など),4)アベレージニッポン(ネット利用が長く,メディア接触傾向は全体平均に近い。東京に次ぐ大都市や,政令指定都市の多い府県。宮城,埼玉,千葉,大阪,京都など),5)ネットシチズン(ネット利用時間が突出して長い。その他メディア接触は平均より少なめ。東京都に特有の傾向)。

調査は15~69歳の男女を対象として2011年10月に実施されたビデオリサーチの「全国新聞総合調査」のデータをもとに,県別にクラスタ分析を実施した。

(http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/report/20121127_6816.html)(accessed 2012-12-10).

1分間に250ページのブックスキャナーを開発

大日本印刷(DNP)は11月19日,1分間に250ページという世界最速レベルのブックスキャナーを東京大学の研究チームと共同で開発したと発表した。今回開発されたブックスキャナーでは,ページをめくるときに生じる紙面の3次元形状を1秒間に500回の速度でとらえ,最も高品質に電子化できる画像をリアルタイムで識別する。さらにリアルタイムでのゆがみ補正アルゴリズムの導入によって,冊子体を裁断せずに,電子書籍で要求される品質での高速スキャンを実現したとしている。DNPでは,開発したブックスキャナーを自社工場に導入し,図書館蔵書等の書籍電子化サービス向けに2013年度中に実用開始の予定。

(http://www.dnp.co.jp/news/10061081_2482.html)(accessed 2012-12-10).

2017年の電子書籍市場の予測

野村総合研究所は11月21日,2017年度までの国内を中心とするICT主要4市場の動向分析と規模予測を行った。同調査は,「デバイス市場」「ネットワーク市場」「プラットフォーム市場」「コンテンツ配信市場」のカテゴリー別に,合計24分野について予測している。そのうち「コンテンツ配信市場」では,「電子書籍」分野が2017年度には約3,700億円まで増加。電子書籍市場の年間平均成長率は21.9%で,「動画配信」(8.0%)や「ソーシャルゲーム」(7.4%)などを上回ると予想されている。スマートフォンでのコンテンツ閲覧が増え,サービス競争の活性化が続くとされている。

(http://www.nri.co.jp/news/2012/121121.html)(accessed 2012-12-10).

「電子書籍端末が欲しい」子どもは21%

米調査会社ニールセンは11月20日,米国の児童を対象に,クリスマスプレゼントにもらいたいIT製品を調査したレポートを発表した。1位はiPadで,48%の児童が欲しいと答えた。2位以下もiPhoneなどのApple製品や,ゲーム機器が占めている。電子書籍端末が欲しいと答えた児童も21%おり,13位に入っている。

(http://blog.nielsen.com/nielsenwire/consumer/u-s-kids-continue-to-look-forward-to-iholiday/)(accessed 2012-12-10).

総選挙情報サイトが開設

12月4日に衆議院議員選挙が公示されたことで,選挙向けサイトがスタートしている。

Twitter Japanは12月4日,Twitter公式イベントページ「#総選挙」をスタートさせた。イベントページは,ハッシュタグなどを活用して,特定トピックに関連するツイートを表示するページ。アメリカではオリンピックや米大統領選挙などで使われている。日本向けのTwitter公式イベントページは,11月27日に発表された「紅白歌合戦」イベントページが初めてで,今回の「#総選挙」は2番目のイベントページとなる。

Google日本法人も11月29日に,選挙情報サイト「選ぼう2012」を開設した。Googleは2009年の衆院選から選挙情報サイトを開設しており,各選挙区の情報や,多様な政党と候補者に関する情報など,あふれかえる情報の中から「選ぶ」ために必要なものをチェックできるようにしている。選挙期間中の12月14日には,一般公募で選ばれた参加者と,各政党代表者が直接話し合うイベント「政治家と話そうby Google」を開催する。このイベントでは,複数名が同時利用できるビデオチャットツール「Google+ ハングアウト」を使用して,有権者が政治家に直接質問するほか,Google+とYouTubeでライブ配信される。

11月29日には,動画共有サイト「ニコニコ動画」を提供するドワンゴが各政党に呼びかけた「ネット党首討論会」が実施された。東京・六本木にあるドワンゴのライブハウス「ニコファーレ」に民主党や自民党など10党の代表が集まって行われた討論会の模様は,「ニコニコ生放送」でライブ配信され,のべ約140万人が視聴した。50万件以上集まったコメントは,会場内でも表示された。「ニコニコ動画」での討論会は当初,自民党の安倍晋三総裁が野田佳彦首相に呼びかけたもの。現在でも,「タイムシフト再生」機能で動画を見ることができる(無料の会員登録が必要)。

(http://blog.jp.twitter.com/2012/12/46twitter.html)(http://googlejapan.blogspot.jp/2012/11/2012-google.html)(http://live.nicovideo.jp/watch/lv116879569)(accessed 2012-12-10).

オバマ大統領がTwitterで勝利宣言

米国大統領選挙は,現地時間11月6日に投票日を迎え,現職のオバマ大統領が再選を果たした。オバマ大統領は勝利宣言をTwitterで行った。「Four more years」(さらに4年だ)というシンプルな勝利宣言ツイートは,発信後1時間で30万回以上リツイートされた。このリツイート数は,同選挙期間中に記録された55,000件を大きく上回って,過去最高記録となった。このツイートは12月7日現在で約82万回リツイートされている。

Twitter Japanのブログによれば,今回の大統領選は「Twitter選挙」と呼ばれることが多かったという。2008年の選挙のツイート数は合計約180万件だったが,今回の選挙では,11月6日の24時間中の選挙関連ツイートが3,170万件に達した。オバマ大統領の再選が決定した時には,過去最高となる1分間に32万7,000件のツイートがあった。選挙戦中も,10月3日にコロラド州で行われた第1回討論会の時間内に1,000万件のツイートが行われた。Twitterも,両候補がTwitter上でどのように考えられているかを表示する「インデックス」や,候補者のツイートが州ごとにどのくらいの反応を起こしたかを表示するページなどを公開している。

(http://blog.jp.twitter.com/2012/11/election2012.html)(http://blog.twitter.com/2012/11/election-night-2012.html)(https://twitter.com/BarackObama/statuses/266031293945503744)(accessed 2012-12-10).

Google検索,「ナレッジグラフ」を導入

Googleは12月5日,日本語のGoogle検索エンジンに「ナレッジグラフ」を導入したことを発表した。従来の検索では,検索語を文字列としてのみ認識していた。これに対して,「ナレッジグラフ」では,検索語を「モノ」として認識し,現実世界の「モノ」や「モノとモノの間のつながり」を認識する。具体的には,5億7,000万以上の人や場所,ものごとに関する情報と,180億以上の属性や関連性を含む構造化されたデータベースを持ち,入力されたキーワードが何を意味するかを把握して,検索結果の一部として表示する。ナレッジグラフの導入により,検索結果には検索された「モノ」についてのサマリーが表示されるようになった。例えば「ルーブル美術館」と入力すれば,Wikipediaの情報などを利用した説明のほか,所蔵作品や開館時間が表示される。また,関連情報も同時に表示される。さらに,同じキーワードが複数の異なるモノを指す場合には,検索結果に複数の候補を表示する。現在,ナレッジグラフは著名人(ミュージシャン・グループ,俳優,歴史的人物,スポーツ選手・チームなど),エンターテインメント(映画・テレビ番組,芸術作品など),場所(有名な建物や観光地,国内外の自治体など),自然科学(生物や天体,化学物質など)等のキーワードに対応。今後表示できるカテゴリーを拡充する予定だとしている。

(http://googlejapan.blogspot.jp/2012/12/blog-post.html)(accessed 2012-12-10).

トムソン・ロイター,イノベーション企業100社を選出

トムソン・ロイターは12月4日,「2012 トムソン・ロイター Top 100グローバル・イノベーター・アワード」を発表した。これは,トムソン・ロイターが保有する知的財産・特許データを基に知財動向を分析し,世界の革新企業/機関トップ100を選出する賞。同社では,特許などの知的財産を,イノベーションや今後のトレンドを俯瞰する基準指標のひとつと考え,過去3~5年間の特許データの集積に独自の選定基準を加え,評価・分析することで,革新的な発見や試みで世界をリードする企業・組織を選出している。具体的な評価基準は,「成功率」,「グローバル性」,「影響力」,「数量」の4つの基準からなり,それぞれ,「特許登録率」,「特許ポートフォリオの世界的広がり」,「引用における特許の影響力」,「特許数」データがベースとなっている。日本からは25社が選出され,米国(47社)に次ぐ2位だった。アジアからは日本のほかに選出されているのは韓国だけで,特許数では世界的に突出している中国は選ばれていない。トムソン・ロイターでは「件数の多さと質や影響力はイコールではない」ことがわかるとしている。

(http://ip-science.thomsonreuters.jp/ips/top100/)(accessed 2012-12-10).

 
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