Journal of Information Processing and Management
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Introduction to legal research for R&D and business : Part 5: Circular and public notices
Aki SHIMA
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2013 Volume 55 Issue 11 Pages 833-838

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1. はじめに

この回の目的は,本連載第2回「法体系」で紹介された「法令のように見えて,法令でないもの」(表1)の調べ方を説明することである(以下,これらを総称する場合は「通達等」と記す)。これらは,「国民(住民)の権利義務に関わる定め」という意味の法令ではなく,「公務員に対して出される命令やマニュアルといったもの」,あるいは,「国民に向けられたものであっても,単なる事実の告知のようなもの」である1)。以下では,この一文について簡単に説明した上で,調べ方の説明に移ることにする。

表1 法令のように見えて,法令でないもの
要綱・要領 事務処理のために定めた行政内部の基準やマニュアルのこと。特に細かく定めたものを「要領」という場合が多い
通達・訓令 上級行政機関が下級行政機関に出す命令や指示。自治体では「訓令」の言葉の方がよく使われる
通知 通達の出せない相手に対して「従ってほしい」という気持ちを込めて出すもの
告示 官報や公報で行う正式な「お知らせ」
ガイドライン・指針 「基準」とか「方向性を示すもの」

本誌2012年11月号「研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門第2回 法体系」より

2. 「通達等」とは

2.1 訓令・通達

「公務員に対して出される命令」とは,上位の行政機関が下位の行政機関に対して出す命令や指示であり,その代表的なものが訓令・通達である。法令の制定や一部改正と同時に出される通達など,多数の訓令・通達によってその法令の解釈や運用方針が明確化され,これらに基づいて所管行政の統一的解釈や執行が図られている。

訓令・通達は,内閣総理大臣,各府省大臣,各委員会および各庁の長官から,所管の諸機関や職員に対して発することができる注1)。また,上記以外の国の機関や地方自治体の機関からも,その下位の所管機関やその職員に対して通達等を発することができる。さらに,上司が部下に与えるものなど,職制上の上下関係において発する通達等もある。なお,上位の行政機関(例えば大臣)の代わりにその補助機関(例えば事務次官または局長)が代理して通達(通知)を発することがあるが,これを一般に「依命通達(通知)」という。

2.2 通知

通達と似ているものとして通知がある。通知は,「通達の出せない相手に対して『従ってほしい』という気持ちを込めて出すもの」である。通知には,国から自治体,所管府省から業界団体に出されるもの等,さまざまなものが含まれる。

2.3 要綱,ガイドライン・指針

「公務員に対して出されるマニュアル」とは,公務員が日常の事務処理を行っていく際に必要となる基準である。要綱注2)やガイドライン・指針はこのようなマニュアルの例と言える。

要綱や指針には,実際にはさまざまな性質のものが含まれる。例えば,要綱には,特に地方自治体において,建築行為や宅地開発に対する行政指導の基準として定められてきたものがある。これらの中には,単なる行政内部のマニュアルにとどまらず,住民や事業者の権利を実質的に制限するようなものもある。そのため,要綱や指針が誰に向けられたものか,「公務員に対して出される命令」(通達)や「国民へのお知らせ」(告示)の性質を持つものではないかなどを見極める必要がある。

2.4 告示

「国民に向けられたものであっても,単なる事実の告知のようなもの」としては,告示がある。告示は,官報や公報を通じて,国民(住民)に対して行う「お知らせ」である。ただし,告示には,法律にその根拠がある場合には,単なる「お知らせ」にとどまらず,法令のように国民の権利義務に関わりを持つものもある。

3. 「通達等」の形式

まず,通達等のイメージを掴むために,具体例を見てみよう。図1は国税庁の「法令解釈通達」であるが,①文書記号・番号,②文書日付,③文書の宛先,④発令機関(発令者)名,⑤題名,⑥本文から成る。

図1 国税庁による法令解釈通達(一部省略)の例(ただし,□の囲み,数字は筆者が追加)

国税庁Webサイトより

3.1 文書記号・番号(図1の①)

通達・訓令・通知に付される「文書記号」は,これらの所管となる各府省の部局課名を表す。図1①の「課個」や「課審」のように略称で示され,「課個」は「国税庁課税部個人課税課」,「課審」は「国税庁課税部審理室」の略である。文書記号の記載方法は府省によりさまざまであるが,分野別六法や通達集の凡例に略称の説明が掲載されることがある。なお,通達等が同一府省の複数部局または複数府省により共同で発令される場合には,所管の機関ごとに文書記号・番号が付される。例えば,文部科学省研究振興局長と厚生労働省雇用均等・児童家庭局長が共同で出した通知の場合には,文書記号・番号は「22文科振第491号/雇児発1217第1号」等となる。

国の行政機関による告示は,「府省名・告示・番号」で示され,「国土交通省告示第七百六十五号」等と表される。告示の番号は,法令と同様に,年ごと・公布順に付される。

また,地方自治体が発令する場合には,「告示第○号」,「訓令第○号」等とされるのが通常である。

「文書番号」については,掲載される資料により漢数字と算用数字のいずれも使われ,どちらで検索するかにより検索結果が異なる場合がある。例えば「基発第0424001号」を検索する場合,数字の表記については「0424001」と「〇四二四〇〇一」があり得るが,どちらの表記を用いても検索結果に含まれるように,「OR検索」を行う必要がある。

3.2 文書日付(図1の②)

文書日付は調査対象を絞り込むためには重要な情報である。注意点は,法令の改正や廃止があるのと同様に,通達等も改正や廃止がなされることである。発令時のものを見たいのであれば,発令された当時の文書日付で検索を行う。しかし,最新の法令解釈や運用方針を確認したい場合には,最新の改正が反映されている通達等を見ることになる。どの時点の通達等を入手すべきか確認した上で,後に説明する方法で検索を進めていく必要がある。

3.3 文書の宛先(図1の③)

通達・訓令・通知には,発令する宛先である下位の行政機関等が記載される。この情報も調査の際の手がかりとなる。なお,通達や訓令は上位の行政機関が下位の行政機関に出すものであることから,下位機関も情報を保持している場合がある。社会福祉関連の通知等,住民や事業者等に密接に関連するものについては,自治体のWebサイトに掲載されることもある注3)。また,通知は,文書の宛先である自治体や業界団体等から,情報が発信される場合もある。

3.4 発令機関(発令者)名(図1の④)

発令機関である府省の名称は,組織改編により変更されている場合がある。特に大規模な改編が行われた2001年以前の通達等を調べる場合には,府省名や部局名についても現在のものとは異なる可能性が高い。発令年度によってはキーワードを旧府省名に変更する等の工夫が必要である。

府省名の変遷を見るには,国立公文書館Webサイトの「省庁組織変遷図」(http://www.digital.archives.go.jp/hensen/)が便利である。通達等を発令する部局課名についても,関連府省のWebサイトの組織編成を確認することにより,正確な名称を得ることができる。

3.5 題名(図1の⑤)

通達等の題名はさまざまであるが,次のような言葉が付される。要綱・要領には,開発指導要綱,補助金交付要綱,事務処理要綱,実施要綱,取扱要領,通達・通知には,運用について,改正について,取扱いについて,取扱規程,告示には,○○を定める件,改正する件,公示(公告)する件,許可する件,実施規程,指針には,ガイドライン,運用指針,行政指導指針等である。なお,1945年頃までは,通達を「通牒」と称していたため,旧い通達を調べる場合には,キーワードに注意したい注4)

また,表2の例のように,題名部分の「要綱」や「ガイドライン」という名称と発令形式が異なる場合も多いため,調査の際には注意が必要である。

表2 題名と発令形式が異なる例
「○○市危機管理対策会議設置要綱」
(平成24年4月6日○○市訓令第6号)
「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」
(平成21年11月20日金融庁告示第63号)

4. 「通達等」の調べ方

さて,通達等の形式を押さえた上で調査を始めることになるのだが,実際の調査の場面では,通達か要綱かなどを厳密に区別しなくても調査を進めることができる。その理由は2つある。1つは,要綱や指針は告示,訓令,通達や通知という形で出されることもあるからである。もう1つは,調査対象資料においては,要綱,通達,告示や指針が一緒に掲載されていることが多いからである。

そこで,通達等の調べ方については,まとめて説明することにしたい。

4.1 国から出されるものの調べ方

国の行政機関から出される通達等を調べるには,各府省Webサイトまたは「電子政府の総合窓口e-Gov」(http://www.e-gov.go.jp/)の「所管の法令・告示・通達等」にまずあたってみる。後者のページには,各府省所管の法令・告示・通達等へのリンク一覧が掲載されている。ただし,上記ページからはリンクが張られていなくても,府省のWebサイトには通達等が掲載されていることもある。関連府省Webサイトをチェックすると同時に,e-Govの「行政機関等ホームページ検索」を試す必要がある。

府省Webサイトやe-Govに掲載されているのは通達等の一部である。ここに掲載されていない通達等については,加除式資料の『基本行政通知・処理基準』,関連する法分野について毎年刊行される「分野別六法」や「通達集」注5)が役立つ。国が提供するものではないが,特定分野の通達等の情報がまとめられているサイトも参考になる注6)

通達等の改正・廃止については,国税庁Webサイトの「法令解釈通達」のように,改正履歴情報が提供されている場合もあるが,すべての府省においてではない。また,府省Webサイトや通達等の検索ページにおいて,廃止・改正されたものがそのまま掲載されていることもある。その時点での情報を得るにはよいが,その後の廃止や改正の情報が付記されていないこともあり,最新情報を入手したい場合には注意が必要である。このような場合には,改正の有無,改正時の文書番号や日付について,複数資料で確認することが望ましい。なお,過去の分野別六法や通達集は,ある時点で有効であった通達等の保存資料でもあり,過去のある時点での通達等を調べるには便利である。

ところで,告示は「国民に対するお知らせ」であるため,官報において公表される。告示(告示として出された要綱や指針を含む)を調べる場合には,官報を見るのが確実である。また,国立国会図書館の「日本法令索引」(http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/)では,2004年8月以降に有効であった主な告示,訓令について,索引情報を検索することができる。なお,国の行政機関による訓令については官報に掲載される場合があるが,通達や通知,要綱や指針は官報には掲載されない。ただし,厚生労働省や農林水産省により出される指針のように,一部の指針については官報の「官庁報告」に掲載されることがある。

4.2 地方自治体から出されるものの調べ方

地方自治体の訓令や要綱を調べる場合には,まず自治体の公報または自治体Webサイト注7)の例規集等を確認する。近年では,自治体Webサイトにおいて,条例や規則だけでなく,要綱の一部を公表する自治体も徐々に増えてきている。要綱を公表している自治体であれば,当該自治体Webサイトで提供されている「例規集」等から,その自治体が発令した要綱が見られる場合もある。

告示は,地方自治体の場合にはその自治体の公報に掲載する方法により行われるのが通常である。したがって,地方自治体による告示は,その自治体の公報で見られる。公報は,通常は当該自治体の図書館で保存されている。また,自治体Webサイトで公開される場合もある。

4.3 目次・索引の利用

これまで紹介してきた資料で通達等の調査を行う際,発令機関の名称が判明していると調査を進めやすい。しかし,発令機関がわからなくても,判明している情報から関連する法分野を特定し,関連府省を絞り込むことはできる。

ただし,法分野の絞り込みが難しい場合であっても,通達等の情報が掲載されているデータベースや索引を利用する方法がある。国立国会図書館の「目次データベース」(http://rnavi.ndl.go.jp/mokuji/)では,法令集や法令解説資料の中で,目次に通達等を掲載している資料を中心として収録がされている。通達等の名称や発令機関・日付等の情報が目次に含まれている場合には,それらをキーワードにした検索ができ,有用である。

また,通達等が掲載されている専門雑誌を調査する方法もある。この場合,国立国会図書館の「雑誌記事索引」(https://ndlopac.ndl.go.jp/)または国立情報学研究所の「CiNii Articles」(http://ci.nii.ac.jp/)が便利である。通達等が出された年に専門雑誌に掲載されることが多いため,件数が多い場合には年月日で絞り込む方法がある。

4.4 情報開示請求

法令とは異なり,通達等は必ず公開されているものではなく,見つからない場合も多い。上記の調査の結果,調査対象である通達等が見つからない場合には,通達等の発令機関が特定できていれば,「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づき情報開示請求を行うこともできる。地方自治体の発する通達等についても,各自治体の「情報公開条例」により,情報開示請求を行うことができる場合もある。

5. おわりに

通達等の調査を行う上では,それらが掲載される資料についての知識が必要である。また,インターネット上の膨大な情報の中から,目的とする法情報の手がかりを得るためには,適確なキーワードの選択や検索結果を絞り込む技術も必要である。さらに,基本的な法律知識を調査に生かすことが,法情報の発見につながる。

例えば,すでに見てきたように,訓令や通達は上位の行政機関から下位の行政機関へと伝えられる指示や命令である(2.1)。この説明から,命令を出す側(上位機関)だけでなく,受け取る側(下位機関)も情報を持っていることへの推測が働き,受け取る側の地方自治体からも多くの情報が発信されていることを発見できる(3.3)。

このように,法律用語の意味,法分野,法制度,行政組織の仕組みなどに関する基本的な知識は,法情報調査を進めていく上でも重要である。これらは,法令や通達等の調査においてだけでなく,次回から続く判例や行政情報などの法情報調査においても,さまざまな手がかりを与えてくれるものである注8)

本文の注
注1)  内閣府設置法第7条第6項,国家行政組織法第14条第2項

注2)  「要綱」と呼ばれるものとしては,法律案の内容を要約した「法律案要綱」もある。その法律案を提出した府省のWebサイトに掲載されていることが多い。

注3)  三重県. “三重県介護保険制度改正リンク集”. http://www.pref.mie.lg.jp/CHOJUS/HP/kaisei/, (accessed 2012-11-24),茨城県. “薬事行政法令・通知情報”.http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/hoken/yakumu/yakujiinfo/tuutilist.htm, (accessed 2012-11-24) 等

注4)  通牒は国立公文書館の「国立公文書館デジタルアーカイブ」(http://www.digital.archives.go.jp/, (accessed 2012-11-24))から検索できる場合がある。

注5)  『登記関係先例集』(テイハン)『労働基準法解釈総覧』(労働調査会)『安全衛生通達要覧』(中央労働災害防止協会)等

注6)  中央労働災害防止協会. “安全衛生情報センター”. http://www.jaish.gr.jp/, (accessed 2012-11-24), 社団法人全日本不動産協会. “通達・告知”. http://www.zennichi.or.jp/fudousan_kanren/fudousan_kanren_list.php, (accessed 2012-11-24) 等

注7)  自治体Webサイトや, 例規集へのリンク集としては「洋々亭の法務ページ」(http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/, (accessed 2012-11-24))がある。

注8)  法律用語を調べるには,『有斐閣法律用語辞典』や『法律学小辞典』(有斐閣)などの法律用語辞典が便利である。また,『確認行政法用語230』(成文堂)や『自治体職員のための法令キーワード辞典』(第一法規出版)のように行政法の分野を対象とした辞典もあり,通達等の用語を調べるのに適している。さらに,法令や通達等に関する詳しい解説は,「行政法」の教科書の事項索引から該当箇所を読むことにより得られる。基本的な法律知識についてインターネット上で解説したものとしては,齊藤正彰@北星学園大学の「法情報学講義」(http://www.ipc.hokusei.ac.jp/~z00199/, (accessed 2012-11-24))が有用である。法律の知識とその調べ方をわかりやすく解説したものとしては,吉田利宏・いしかわまりこ『法令読解心得帖』(日本評論社,2009)がある。

参考文献
 
© 2013 Japan Science and Technology Agency
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