韓国の統計制度は分散型統計制度である。中央行政機関や地方自治体のほか,統計庁の指定した機関が統計情報を作成し公表している。指定機関には,金融機関,公社,研究機関,業界団体が含まれる。従来これらの分散された統計は,時代に対応したものが少なく,重複した統計が多かった。2004年10月に大統領が公式統計インフラの改善方案の検討を指示し,その後韓国統計庁が本格的に公式統計の改善に取り組み始めた。ここでは,韓国の統計制度を概観し,KOSIS(国家統計ポータルサイト:韓国統計庁)とECOS経済統計システム(韓国銀行)の2つの統計ポータルサイトを紹介する。
韓国では,統計法に基づき,中央省庁,地方自治体だけでなく統計庁から承認を受けた金融機関,公社,研究機関,業界団体が作成した統計を公式(政府承認)統計としている。公式統計は2種類に区分され,政策樹立や評価に広く活用されるものを指定統計,それ以外を一般統計と呼ぶ。さらに,作成方法別に整理すると調査統計,報告統計,加工統計の3つに区分される。調査統計は統計作成機関が調査対象者に対し,面接,郵便,電話,インターネットを通じて調査したものである。報告統計は,統計作成機関が許認可,報告などの行政行為をすることで付随的に得られるデータを集計したものである。加工統計は調査統計や報告統計を加工し,新しく指標や指数を作成したものである(表1)。
区分 | 作成機関数 | 作成統計数 | 種類別 | 作成方法別 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
指定 | 一般 | 調査 | 報告 | 加工 | |||
合計 | 384 | 901 | 94 | 807 | 392 | 442 | 67 |
政府機関 | 301 | 742 | 75 | 667 | 293 | 399 | 50 |
中央行政機関 | 40 | 337 | 59 | 278 | 172 | 140 | 25 |
統計庁 | 1 | 57 | 42 | 15 | 43 | 2 | 12 |
その他 | 39 | 280 | 17 | 263 | 129 | 138 | 13 |
地方自治体 | 261 | 405 | 16 | 389 | 121 | 259 | 25 |
指定機関 | 83 | 159 | 19 | 140 | 99 | 43 | 17 |
金融機関 | 8 | 25 | 10 | 15 | 11 | 6 | 8 |
公社/公団 | 22 | 42 | 2 | 40 | 17 | 23 | 2 |
研究機関 | 18 | 28 | 2 | 26 | 22 | 3 | 3 |
協会/組合 | 24 | 39 | 4 | 35 | 34 | 3 | 2 |
その他 | 11 | 25 | 1 | 24 | 15 | 8 | 2 |
出典:統計庁Webサイト(http://kostat.go.kr/portal/korea/index.action)
韓国では統計データの電子化が進んでおり,公式統計のほとんどがインターネットで公開されている。また,冊子体で刊行されていた書籍の中から主要なものについてはオンライン刊行物としてインターネットで閲覧できる。
2.2 統計制度の進展韓国の公式統計はこれまで大きな問題を抱えていた。経済と社会の急激な変化にも関わらず,時代に対応した統計が未整備であった。品質が不十分であったり重複した統計が多かったりして,政策樹立や評価のための活用に限界があった。また,統計専門組織や人材不足により必要な統計情報をタイムリーに提供することが難しかった。このような状況で,2004年10月に大統領が公式統計インフラの改善方案の検討を指示した。これは,政府として初めて公式統計全般に対する問題を整理し,解決方案を実現する契機となるものであった。2005年3月に公式統計インフラの強化方案を具体化するための「国家統計インフラ強化特別委員会」を設置し,2005年12月に,「中期(2006年~2010年)国家統計システム改革方案」を策定した(表2)。
分野 | 主要内容 |
---|---|
公式統計開発・改善 | ・国政運営に有用な統計開発と継続的な開発システムの構築 -5年間(2006年~10年)に126種開発・改善 |
統計の品質向上 | ・公式統計全体に対する精密な品質診断の設置 ・主要政策統計を統計庁が調査代行 |
利用の利便性向上 | ・統計庁DBと各機関との連携を継続的に拡大 -2008年までに「国家統計統合DB」構築 |
統計インフラの強化 | ・統計委員会を国家統計委員会に格上げ ・統計開発と研究能力強化のための統計開発院設置 |
出典:살아있는 통계 변화하는 통계청. 통계청,2007.12
その後は公式統計の体系的管理のために公式統計制度を改善し,利用に合わせたサービスの拡充に努めてきた。統計基盤の政策管理制度や統計品質管理制度を実現し,公式統計ポータルサービスの拡大と統計情報の視覚的サービスなどの促進を行っている。また,統計庁は中央統計機関としての責務を果たすため「国家統計発展戦略」や「統計基盤政策管理制度」を策定し,施行している。
2012月12月現在,統計作成機関数は384(中央行政機関40,地方自治体261,指定機関83),作成統計数は901である(表1)。統計庁は韓国の中央統計機関として人口センサス,住宅センサス,農林漁業センサス,経済センサスなどの各種センサスと,人口,経済,社会等に関する標本調査以外に,統計法に基づき統計基準の設定,品質診断,調整業務などを行っている。2011年12月現在,本庁(1長官,5局,4担当官,26課,6チーム)と所属機関(2院,5地方庁,49事務所)を合わせて2,225人の職員が勤務している。
2.3 国家統計委員会統計の重要性と政策への活用度が次第に増す状況であったため,統計庁は公式統計に関する主要政策を審議・決定するための別途の機構が必要だと判断し,国家統計委員会を2007年12月に設置した。すでに統計委員会というものがあったが,統計庁長官の単純な諮問機関で,公式統計全般に対する意思決定遂行が不可能だった。国家統計委員会の設置により部署別の中長期統計発展計画,品質診断および改善事項,省庁間での行政資料の共有など,主要な公式統計関連政策を審議,決定できるようになった。
国家統計委員会は,統計法第5条の2の国家統計委員会規定に基づき,企画財政部長官を委員長として設定された委員会で,統計の作成,普及,利用に関する表3の事項を審議,議決する機構である。
統計制度の改善・開発に関する事項 |
新しい統計の開発など,統計発展計画に関する事項 |
類似・重複統計の調整,統廃合および統計作成機関間の協力に関する事項 |
統計品質診断および改善など,品質管理に関する事項 |
統計標準分類など,統計の作成・普及および利用の基準に関する事項 |
行政資料の活用に関する事項 |
その他の統計の作成・普及および利用に関する事項 |
出典:統計庁Webサイト(http://kostat.go.kr/portal/korea/index.action)
KOSIS(Korean Statistical Information Service)(http://kosis.kr/)とは,韓国統計庁が公式承認統計をデータベース(DB)化したもので,インターネットを通じてワンストップで統計情報を利用できる公式統計ポータルである。2005年までは作成機関ごとに統計を作成し,DB,Excel,Wordなどの形式でデータを公開していた。その後,情報戦略計画(ISP)を通じて事業の妥当性を検討した後,2006年から公式統計統合DBを構築し,2007年7月にサービスを開始した。
現在115以上の機関で作成する524種の国家承認統計を公開している。また,国内の統計だけでなく,国際統計,北朝鮮の主要統計なども提供している。
なおKOSISでは英語での統計データのコンテンツは主要統計のみ提供している。収録されている膨大な統計データにアクセスするには,韓国語版Webサイトの利用が必要である。従って,以下では,「(7)英語版表示の統計(上段メニュー)」以外は韓国語版Webサイトについて紹介する。
3.2 KOSISで入手できる統計 (1)全体の構成トップ画面,サイドメニュー,上段メニュー,メインメニューなどで構成されている。
トップ画面は大きく分けて9種類あり,1)新規コンテンツバナー,2)最新・人気統計,3)統合検索,4)グラフ,5)公示事項,報道資料,統計コラム,6)ポップアップ(新しい統計情報サービス),7)数字で見る韓国(韓国の主要指標),8)主題対象別統計(家族,健康,景気,交通,犯罪,保険,不動産,老人,子供,青少年,女性,外国人,障害者など社会統計),9)クイックメニュー,である。メインメニューは6種類あり,1)国内・国際統計,2)特集統計,3)テーマ統計,4)地域統計,5)統計教室,6)統計のお知らせ,となっている。
統計データを見る場合は,対象とする項目をクリックして抽出したい期間を指定すれば,時系列のデータが画面に展開される。データはExcel,CSV,テキスト形式でダウンロードできる。なお,データを閲覧する際には専用のソフトウエアをインストールする必要がある。
国内・国際統計(メインメニュー)は サイドメニューと組み合わせて項目を選択し,統計データの閲覧およびダウンロードを行うことができる(表4)。
1 | 人口・世帯 |
2 | 雇用・労働・賃金 |
3 | 物価・家計 |
4 | 保健・社会・福祉 |
5 | 環境 |
6 | 農林漁業 |
7 | 鉱工業・エネルギー |
8 | 建設・住宅・土地 |
9 | 交通・情報通信 |
10 | 卸売小売業・サービス業 |
11 | 景気・企業経営(事業体) |
12 | 国民勘定・地域経済・国家資産(国富) |
13 | 財政・金融・保険 |
14 | 貿易・外国為替・国際収支 |
15 | 教育・文化・科学 |
16 | 行政 |
17 | 光復以前の統計(1908–1943) |
出典:KOSIS国家統計ポータルWebサイト(http://kosis.kr/)より筆者作成
特集統計(メインメニュー)は表5のように構成されている。
1 | 韓国の主要指標(家計,景気,国民経済計算,国際収支,労働・賃金,物価,産業活動,人口,通貨・金融) |
2 | G20統計状況 |
3 | 景気循環 |
4 | 光復以前の統計(1908–1943) |
5 | 大韓民国統計年鑑 |
6 | オンライン刊行物 |
7 | 北朝鮮統計ポータル |
8 | e–国家指標 |
出典:KOSIS国家統計ポータルWebサイト(http://kosis.kr/)より筆者作成
統計的価値のある歴史資料の統計化作業の一環として,光復(朝鮮が独立した1945年8月15日)以前の1908年~1943年までの朝鮮総督府統計年報全体をハングルに翻訳したものである。韓国の国土面積,人口,経済,保健,教育など14分野の約2,300の統計表が収録され,光復以前の経済,社会分野の基本統計を見ることができる。
(3)大韓民国統計年鑑(メインメニュー / 特集統計)1950年~1960年代の韓国の経済,社会,文化など主要分野に関して収録されたもので,朝鮮戦争時期の混乱期の韓国の多様な姿を見ることができる。
(4)オンライン刊行物(メインメニュー / 特集統計)ここでは,各種統計関連刊行物を主題別,名称別の中から選んで冊子体のイメージで統計データを閲覧することができる。統計データは,PDF,Excel,e-Bookなどの形式でダウンロードすることができる(表6)。
ダウンロード形式 | ダウンロード形式 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
総合刊行物 | Excel | e–Book | 建設 | Excel | e–Book | ||
国際統計年鑑 | ○ | ○ | 建設景気動向 | ○ | |||
北朝鮮の主要統計 | ○ | ○ | 建設業調査報告書 | ○ | |||
月刊国際統計 | ○ | ○ | 卸売・小売業・サービス | Excel | e–Book | ||
主要政策対象別統計指標 | ○ | 卸売・小売業調査報告書 | ○※ | ○ | |||
韓国統計年鑑 | ○ | ○ | サービス業生産指数月報 | ○ | |||
韓国統計年鑑ハンドブック | ○ | サービス業調査報告書 | ○※ | ○ | |||
韓国統計月報 | ○ | 小売販売額統計 | ○ | ||||
人口・世帯 | Excel | e–Book | 運輸業調査報告書 | ○※ | ○ | ||
国内人口移動統計年報 | ○ | 専門・科学・技術サービス業調査報告書 | ○※ | ○ | |||
国際人口移動統計年報 | ○ | 電子取引・サイバーショッピング動向 | ○※ | ○ | |||
生命表 | ○ | 景気・企業経営(事業体) | Excel | e–Book | |||
市・道別生命表 | ○ | 景気総合指数 | ○ | ||||
人口動態(出生,死亡) | ○ | 全国事業体調査 | ○ | ||||
人口動態(婚姻,離婚) | ○ | KOSTAT景気動向 | ○※ | ○ | |||
将来人口統計 | ○※ | ○ | 地域経済・国富 | Excel | e–Book | ||
住民登録人口および外国人登録人口 | ○ | 国家資産統計 | ○※ | ○ | |||
雇用 | Excel | e–Book | わが地域の主要指標 | ○ | |||
経済活動人口年報 | ○ | 地域経済動向 | ○ | ||||
経済活動人口月報 | ○ | 地域所得統計 | ○ | ○ | |||
物価・家計 | Excel | e–Book | 教育・文化・科学 | Excel | e–Book | ||
家計金融調査 | ○※ | ○ | 私教育費調査報告書 | ○※ | ○ | ○ | |
消費者物価指数年報 | ○ | その他の刊行物 | Excel | e–Book | |||
消費者物価指数月報 | ○ | 国家承認統計目録 | ○ | ||||
保健・社会 | Excel | e–Book | 国家承認統計現況 | ○ | |||
高齢者統計 | ○ | 国家統計品質管理マニュアル | ○ | ||||
グリーン生活調査報告書 | ○ | 生きている統計,変化する統計庁 | ○ | ||||
死亡原因統計年報(市・道編) | ○ | 主要統計指標解説 | ○ | ||||
死亡原因統計年報(全国編) | ○ | 統計基盤政策管理主要事例集 | ○ | ||||
社会調査報告書 | ○ | 統計で見る韓国とEUの自画像(英語) | ○ | ||||
生活時間調査報告書 | ○ | 統計人力および予算調査結果報告書 | ○ | ||||
青少年統計 | ○ | 統計調査現場体験事例集 | ○ | ||||
統計で見る女性の生活 | ○ | Explore Korea through Statistics | ○ | ○ | |||
韓国の社会動向 | ○ | 地方庁刊行物 | Excel | e–Book | |||
韓国の社会指標 | ○ | 東南圏高齢者統計 | ○ | ||||
KOSTAT社会動向 | ○ | 東南圏青少年統計 | ○ | ||||
農林漁業 | Excel | e–Book | 釜山市民の生活の質 | ○ | |||
家畜動向 | ○ | ○ | 統計で見る10年間の慶南経済・社会変化 | ○ | |||
農家経済統計 | ○ | 統計で見る10年間の東南圏経済・社会変化 | ○ | ||||
農林漁業調査報告書 | ○ | ○ | 統計で見る10年間の釜山経済・社会変化 | ○ | |||
農産物生産費統計 | ○ | 統計で見る10年間の蔚山経済・社会変化 | ○ | ||||
農漁業法人調査報告書 | ○ | ○ | 統計で見る今日の全北 | ○ | |||
農業面積統計 | ○ | 統計で見る済州の昨日と今日 | ○ | ||||
農作物生産統計 | ○ | 湖南地域の昨日と今日 | ○ | ||||
穀物消費量調査報告書 | ○ | 湖南地域の漁業生産動向 | ○ | ||||
漁家経済統計 | ○ | ○ | 湖南地域の人口移動統計 | ○ | |||
魚類養殖動向調査 | ○ | 2008年光州・全南地域統計 | ○ | ||||
漁業生産動向 | ○ | 2009年湖南地域統計 | ○ | ||||
主要作物生産動向 | ○ | 2010年慶南高齢者統計 | ○ | ||||
畜産物生産費統計 | ○ | 2010年慶南道民の生活の質 | ○ | ||||
農林漁業総調査総合報告書 | ○ | 2010年東南圏の市・道民の生活の質 | ○ | ||||
鉱工業 | Excel | e–Book | 2010年釜山高齢者統計 | ○ | |||
鉱工業生産動向 | ○ | 2010年蔚山高齢者統計 | ○ | ||||
鉱工業生産年報 | ○ | 2010年蔚山市民の生活の質 | ○ | ||||
鉱業製造業調査報告書 | ○ | ||||||
機械受注動向 | ○※ | ○ |
※ 本文または解説のみ
出典:KOSIS国家統計ポータルWebサイト(http://kosis.kr/)より筆者作成
韓国内外に散在している北朝鮮関連統計を集めて,13部門の年間・月間統計表と国際機関の年間統計表を提供している。基本メニューでは,6つのカテゴリ(北朝鮮統計,特集統計,刊行物,北朝鮮統計用語,北朝鮮関連機関,北朝鮮ニュース・ご意見)に分類されている。主要統計へのリンクでは,主題別統計,国際地区別統計,市場開放国家統計を利用できる。
(6)テーマ統計(メインメニュー)テーマ統計は,1)最新統計,2)人気統計,3)対象別統計,4)話題の統計,5)記念日統計,6)統計から見る自家像,7)わが家の物価体験,8)人口ピラミッドなどで構成されている。
(7)英語表示の統計(上段メニュー)英語版のページから英語表示の統計データを閲覧できる。表7の主題統計を階層別に選択していくと統計が表形式で表示される。期間を選定すると過去のデータを時系列で入手でき,Excel,CSV形式でダウンロードできる。韓国語版のページとは内容が異なり,利用できる統計が限定される。
1 | Population/Household |
2 | Employment/Labor/Wage |
3 | Price/Household Income And Expenditure |
4 | Health/Society/Welfare |
5 | Agriculture, Forestry And Fishery |
6 | Mining And Manufacturing Industry/Energy |
7 | Construction/Housing/Land |
8 | Transportation/Information And Communication |
9 | Wholesale and Retail Trade/Service Industry |
10 | Economy/Corporate Business(Company) |
11 | National Accounts/Regional Accounts/National Wealth |
12 | Finance/Banking/Insurance |
13 | Trade/Foreign Exchange/Balance Of Payments |
14 | Education/Culture/Science |
出典:KOSIS国家統計ポータルWebサイト(http://kosis.kr/)より筆者作成
中央銀行である韓国銀行は1950年6月の創立以来,通貨および金利,国民所得,物価,国際収支,資金循環,景気,企業経営分析,産業連関分析など,経済各分野にわたって主要な公式基本経済統計を作成し提供してきた。これらの統計は,政府の経済政策の立案だけでなく,一般国民の経済活動とも密接な関係がある経済指標である。インターネットの利用率が高まり,Webでの情報サービスの利用が多くなるのに伴い,2004年1月に統計専用の韓国銀行経済統計システム(ECOS: Economic Statistics System)(http://ecos.bok.or.kr/)を構築した。データ検索(増減率計算,グラフ閲覧,ダウンロード機能含む)と統計刊行物検索がメイン機能であるが,無料の会員登録を行うと,よく利用する統計の分析や保存ができる。
4.2 ECOSで入手できる統計 (1)統計検索統計簡易検索では,より簡易なインターフェースで,韓国銀行が作成している経済統計や,他機関作成の主要経済統計を検索できる。複数統計検索は同じ周期のいくつかのデータ項目を同時に検索して比較できる機能である。データはExcel,CSV,XML,テキスト形式でダウンロードできる。検索および入手できる統計データは表8のとおりである。英語版でも韓国語版とまったく同じデータが収録され,同様に簡易検索,複数検索の機能がある。
通貨・流動性指標 |
韓国銀行主要勘定および基準金利 |
預金/貸出金/その他金融 |
金利 |
資金決済 |
証券/財政 |
物価 |
国際収支/外債/外国為替 |
企業景気/消費者動向/経済心理 |
国民勘定 |
資金循環 |
企業経営分析 |
産業連関表 |
貸出形態調査 |
産業・雇用 |
マクロ経済分析指標 |
海外/北朝鮮 |
出典:韓国銀行ECOS経済統計システムWebサイト(http://ecos.bok.or.kr/)
韓国銀行および他機関作成の統計の中で政策立案や動向分析に必要な統計指標100を選定し,グラフと合わせて統計速報を一覧で提供している。大項目として,国民所得・景気・企業経営,産業活動・消費・投資,雇用・賃金・家計,通貨・金融,金利に分かれている(表9)。各統計指標をクリックすると最近の時系列データとグラフが表示され,そのほか報道資料や主要関連統計グラフを見ることができる。韓国語版と同様の内容が英語版でも入手できる。
国民所得・景気・企業経営 | 雇用・賃金・家計 | 金利 |
---|---|---|
経済成長率 | 経済活動人口 | 債権取引代金 |
民間消費増減率 | 就業者数 | 株式発行額 |
設備投資増減率 | 失業率 | 社債発行額 |
建設投資増減率 | 雇用率 | 国債発行額 |
GDP | 時間当たり名目賃金増減率 | 手形不渡率 |
GDPデフレータ | 労働生産性増減率 | 消費者物価指数 |
一人当たりGNI | 単位労働費用増減率 | 生産者物価指数 |
総貯蓄率 | 世帯当たり月平均所得 | 輸出物価指数 |
国内総投資率 | 通貨・金融 | 輸入物価指数 |
輸出入の対GNI比率 | M1(狭義通貨) | 根源インフレーション指数 |
製造業業況実績BSI | M1–MMF | 生活物価指数 |
消費者心理指数 | M2(広義通貨) | 住宅売買価格指数 |
景気動向指数循環変動値 | Lf(平残) | 住宅傳貰価格指数 |
景気先行指数循環変動値 | L(末残) | 地価変動率(前期対比) |
製造業負債比率 | 預金銀行総預金 | 国際原油価格 |
売上高税引き前純利益率 | 預金銀行貸出金 | 経常収支 |
製造業売上高増減率 | 家計信用 | 資本・金融勘定 |
産業活動・消費・投資 | 家計貸出延滞率 | 対外債務 |
製造業生産指数 | 金利 | 輸出 |
製造業出荷指数 | コール金利 | 輸入 |
製造業在庫指数 | KORIBOR(3か月) | 海外直接投資 |
製造業稼働率指数 | CD収益率(91日) | 外国人直接投資 |
サービス業生産指数 | 通安証券収益率(364日) | 輸出単価指数 |
小売販売額指数 | 国債収益率(3年) | 輸入単価指数 |
卸小売業指数 | 国債収益率(5年) | 純商品交易条件指数 |
自動車販売業指数 | 社債収益率(3年,AA–) | ウォン/ドル為替レート(基準) |
個人信用カード使用額 | 預金銀行受信金利 | ウォン/ドル為替レート(終価) |
設備投資指数 | 預金銀行貸出金利 | ウォン/円(100円)為替レート |
国内主要機械受注額 | LIBOR(U$,3か月) | ウォン/ユーロ為替レート |
内需用機械類輸入額 | アメリカ国債収益率(10年) | 外貨保有高 |
機械類内需出荷指数 | 総合株価指数 | 推計人口 |
建築許可面積 | コスダック指数 | 自動車登録台数 |
建築着工面積 | 株式取引代金 | 住宅普及率 |
建設受注額 | 顧客預託金 | ジニ係数 |
建設既成額 | 株式型収益証券残額 | 教育費支出率 |
保健医療費支出率 |
出典:ECOS韓国銀行統計経済システム(http://ecos.bok.or.kr/)
統計庁は2012年の統計政策の推進条件として,次の5つを挙げている。1)透明な政策形成のための信頼性ある統計の作成,2)社会・福祉・環境・地域政策関連統計の優先的作成,利用者の要求に迅速に対応するためのスマート機器などの活用,3)統計調査における回答者の負担軽減,4)分散型統計システムにおける統計作成機関の人的・物的インフラの不足の解消,5)統計の国際化,である。このように統計に対する利用者の要求が高まりつつある状況において迅速で便利なサービスを展開していく政策を打ち出している。最近では,英語版のサイトからも主要な統計データを入手することが可能になった。着実に統計データのサービスを拡充している姿がうかがえる。欲を言うならば,英語版のページが韓国語版の充実度に比べるとまだまだ貧弱であることと,統計データを閲覧するために専用ソフトウエアをインストールしなければならないことなどの不便を解消できれば,さらに便利な統計ポータルになるであろう。