Journal of Information Processing and Management
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2013 Volume 55 Issue 12 Pages 939-942

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Macmillanもついに司法省と和解

電子書籍の価格協定をめぐり,2012年4月に米国司法省がApple社と大手5出版社を相手どって起こした訴訟では,和解案に同意していなかったPenguinグループが2012年12月に和解協定に署名したばかりだが,残りの出版社Macmillanも,2013年2月8日,ついに和解に同意した。著者,イラストレーター,エージェント宛に発表された声明の中で,CEOのJohn Sargent氏は,不利な結果の可能性がある中で危険を冒すには,潜在的罰金があまりにも高額になったことが和解の理由であり,Penguinが和解したことにより,Macmillanのみが正規のエージェンシー価格(出版社が価格決定)での販売を続けても,市場全体に影響を及ぼすことができなくなったことを述べた。また,Macmillanは何も間違ったことをしておらず,和解は罪を認めるものではないと主張している。これまで和解に反対してきた理由については,次の2点を挙げた。(1)和解案が要求した電子書籍価格のディスカウントは,出版界に害を及ぼすほどのレベルであったことと,(2)自分は,悪いことをしていなければ和解をすべきでないとの信念の持ち主だったことである。しかしSargent氏は,今はそれが古い考えであるのがわかったとも述べている。裁判所が和解案を認可した後に,小売業者は現行契約に関係なく,Penguinが和解した2012年12月18日から23か月間,Macmillan電子書籍の価格を引き下げられるようになるが,Macmillanはそれを待たず,小売業者が直ちに価格を引き下げることを認めた。Macmillanは,反トラスト法コンプライアンス・プログラムを課され,他出版社と協同で行う計画は事前に司法省に通知しなければならず,他出版社とのあらゆるコミュニケーションを定期的に報告することを求められることになる。5つの出版社すべてが和解したことにより,唯一残されたApple社も和解に動くものと期待される。

(http://www.justice.gov/atr/public/press_releases/2013/292578.htm)(http://www.tor.com/blogs/2013/02/a-message-from-john-sargent)(accessed 2013-02-12).

Episciencesプロジェクト

ケンブリッジ大学のTim Gowers数学教授が,epijournalと名づけたオープンアクセス誌を,敏速かつ簡単にセットアップするEpisciencesプロジェクトを発表した。epijournalは,コーネル大学が運営するarXivサーバー上の学術論文プレプリントにリンクする,オーバーレイジャーナルである。論文は,従来のジャーナルと同様の編集プロセスとピアレビューを経るが,書式設定やタイプセットを省き,製作コストはほとんどかからない。フランス政府の財政援助を得て,サイト維持に付随するコストはすべて,Centre pour la Communication Scientifique Directe(CCSD,直接科学コミュニケーション・センター)が,グルノーブル大学のInstitut Fourier(フーリエ研究所)と協力して負担し,科学コミュニティーは無料で自分の出版システムを運営することができる。このイニシアチブの目的は,数学コミュニティーのさまざまな部門を満足させるようなepijournalを数多く作成できるようにすることで,学者たちが論文のピアレビューや編集を最小の管理作業で行えるソフトウェアの開発を目指す。epijournalが受け入れた論文を,arXivのみならず,コメントやレビューの非匿名ページにもリンクする可能性も検討されている。Gowers教授は,編集者が選んだ論文がなぜ興味深いのかについて1~2項目書く,ささいな誤りを見つけた読者がその誤りの説明や訂正方法を書く,その分野の専門家がレビューを書くなどを例として挙げている。誰もが読めるだけでなく,再出版も自由な“ダイヤモンド”オープンアクセスとしてのepijournalプロジェクトは4月に開始予定である。なお,Gowers教授は2012年に,Elsevier社のジャーナルには論文を載せず,査読者や編集者の役割も果たさないと宣言し,Elsevier社ボイコットを呼びかけて多くの賛同者を得た人物として名高いオープンアクセス推進者である。

(http://gowers.wordpress.com/2013/01/16/why-ive-also-joined-the-good-guys/)(accessed 2013-02-12).

NISOがオープンアクセスメタデータとインディケーターの標準を開発

米国情報標準化機構(NISO)がジャーナル論文のアクセシビリティと,それがどの程度オープンであるかを記述する書誌メタデータと,視覚インディケーターの標準化を図るプロジェクトを開始することになった。Open Access(OA),Increased Access,Public Accessなどの旗の下に出版社から多数提供されているメタデータやインディケーターは,出版社ごとに異なる。現在,それぞれの論文が自由に読めるか,読者にはどのような再使用権が得られるのかを記述する書誌メタデータや視覚インディケーターの標準は存在しない。論文のオープンの度合いを示すインディケーターやアイコンは,同一出版社のジャーナル間でも一致しないことすらある。今回のプロジェクトは,NISOのOpen Discovery Project(インデックス検索をベースとする,新世代の図書館ディスカバリサービスの基準/ベストプラクティスを定義する)や,CrossRef,PLoS,SPARC,OASPA,JISC/UKOLN,EDItEURなどが現在取り組んでいる関連プロジェクトを補完するものである。まずは,オープンアクセス論文に付随する読者の権利を記述するメタデータエレメントに焦点が当てられる。具体的には,ワーキンググループが権利を記述・伝達する最適メカニズムを決定する。再使用権に関する統合情報や,データ伝達に関する合意のフィージビリティも検討する。

(http://www.niso.org/publications/newsline/2013/newslinefeb2013.html)(accessed 2013-02-12).

文化庁,電子書籍の配信実験を実施

文化庁は1月29日,電子書籍の配信実験「文化庁eBooksプロジェクト」を実施することを発表した。このプロジェクトは,「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する実証実験」の一環として,国会図書館の保有するデジタル化資料13作品を電子書籍として実際に配信する。国会図書館の保有するデジタル化資料については以前より,新たなビジネスモデルの開発や,限定的・実験的な有償配信サービスの実施検討などが必要とされてきた。そのため,このプロジェクトでは,対象資料の選定から権利処理,電子書籍の制作,実際の電子書店を通じた配信を一貫して行うことで,課題や有効策を明らかにし,将来のガイドライン作成につなげることを目指す。配信されるデジタル化資料は,「平治物語〔絵巻〕」(第一軸:三条殿焼討巻)や芥川龍之介の直筆原稿「河童」など。配信は紀伊國屋書店BookWebを通じて行われる。配信期間は2月1日から3月3日まで。

(http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/ebooks_130129.pdf)(http://k-kinoppy.jp/kinokuniya/bunka/)(accessed 2013-02-12).

退職した従業員の半数が機密情報を持ち出し

米シマンテックは2月6日,企業の従業員による知的財産の扱いに関する意識調査の結果を発表した。この調査によると,過去1年間に退職したり,解雇されたりした従業員の半数が,元の勤務先の機密情報を保有し続け,40%がそれを新しい職場で使うつもりだと回答した。また,仕事上の文書を個人用のコンピューターやモバイル端末,ネットのファイル共有アプリに転送しても構わないと答えた人は62%に上った。さらに56%の人は,元の勤務先から持ち出した機密情報を使うことは犯罪に当たらないと答えている。調査結果からは,従業員による機密情報の持ち出しや使用に対して,多くの組織では適切な対策が取られていないことも明らかになった。シマンテックでは,企業が従業員に対して,知的財産の持ち出しは犯罪に当たるという認識を徹底させていないとして,従業員教育や,機密情報へのアクセスの監視などの必要性を指摘している。

(http://www.symantec.com/about/news/release/article.jsp?prid=20130206_01)(accessed 2013-02-12).

Google,仏メディア業界向けに基金設立

Googleのシュミット会長は2月2日,フランスでメディア業界向けに6,000万ユーロ(約76億円)のデジタル出版支援基金を設立し,同時に,メディア各社がオンライン広告から収益を得るための支援を行うと発表した。Googleはこの2つのイニシアチブを「イノベーションを促進し,フランスのメディアが売り上げを拡大するのを支援する」ものだとしている。フランスでは,Googleによるニュース記事へのリンクをめぐり,メディア各社が著作権侵害として対価支払いを求める動きが広がっており,今回の基金設立はこの争いを解決するためのものと見られている。

(http://googleblog.blogspot.jp/2013/02/google-creates-60m-digital-publishing.html)(accessed 2013-02-12).

Google,超小型コンピューター15,000台を寄贈

英国の非営利団体ラズベリーパイ財団(Raspberry Pi Foundation)は1月29日,Googleが超小型コンピューター「Raspberry Pi」15,000台を英国の小学生に寄贈すると発表した。「Raspberry Pi」は同財団が教育用に開発したもの。寄贈される35ドルの「Model B」は,クレジットカード大のボードにARM Coreベースのプロセッサと512MバイトのRAM,HDMI,USB 2.0などのインターフェースを搭載している。寄贈先の選定などは,コンピューター教育を推進する英国内の6団体が協力する。また,寄贈されるRaspberry Piには,そうした協力団体が作成した無料の教材セットが付属する。今回の寄贈は,Googleの社会還元プログラム「Google Giving」の一環として行われる。

(http://www.raspberrypi.org/archives/3158)(accessed 2013-02-12).

オープン旅行ガイド「Wikivoyage」がスタート

ウィキペディアを運営する非営利団体Wikimedia Foundationは1月15日,オープン旅行ガイドサイト「Wikivoyage」を公開した。ウィキペディアと同様に,ボランティアの編集者によって国や都市についてのガイド記事が編集され,公開される。2月12日現在,英語,ドイツ語,イタリア語などの記事が公開されており,英語版では既に27,000件の記事が掲載されているが,日本語記事はまだ掲載されてない。記事編集は誰でも自由に行えるほか,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で自由に再利用・再配布が可能。さらに,「Create a book」機能を使うと,好きな記事を選んでEPUB電子書籍やPDFファイルとして出力することもできる。Wikivoyageは,ドイツの非営利団体Wikivoyage Associationが2006年に立ち上げたプロジェクトで,2010年10月にWikimedia Foundationへの寄贈が認められ,翌11月から同財団のサーバーに移行してベータテストが行われてきた。

(http://wikimediafoundation.org/wiki/Press_releases/Wikimedia_Foundation_launches_Wikivoyage)(accessed 2013-02-12).

Facebook,つながり重視の「グラフ検索」を発表

Facebookは1月15日,Facebook内の新検索機能「グラフ検索」を発表した。GoogleなどのWeb検索が,検索フレーズとの関連性の高さによって検索結果を得るのに対し,グラフ検索では,検索フレーズに該当するFacebook上の共有情報が表示され,ユーザー同士のつながりが重視されている。Facebookによる紹介ページでは,「サイクリングが好きで,出身地が自分と同じ人」「1990年以前の写真」「ニューヨークの友達の写真」「友達が『いいね!』といった写真」などの検索事例が紹介されている。グラフ検索では,Facebook上での共有設定に応じた検索結果が表示されるため,検索結果は人によって異なる。例えば,友達限定で共有した情報は,友達の検索結果にのみ反映される。当初は一部のユーザーに対してβ公開され,数か月をかけて提供言語を拡大していく予定。

(http://newsroom.fb.com/News/562/Introducing-Graph-Search-Beta)(https://www.facebook.com/about/graphsearch)(accessed 2013-02-12).

個人開発の商標検索サイトがオープン

商標検索サイト「商標検索β」が2月2日公開された。このサイトは,商標を出願人,商標名,業種・企業名,年代などから検索できるサイトで,特許庁の「商標出願・登録情報」検索サイトから情報を得ている。開発したのは,個人開発者の矢野さとる氏。同氏はこれまで,ネット上の犯行予告を集めるサイト「予告.in」や官報の全文検索サイト「官報検索!」などを個人で開発してきた。「商標検索β」は「商標をもっと簡単に検索し,シェアしたい」として開発。iPhoneなどのスマートフォンに対応しているほか,Googleのトレンドワードからの商標検索もできるようになっている。

(http://syohyo.jp/)(http://d.hatena.ne.jp/satoru_net/20130202)(accessed 2013-02-12).

 
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