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いすゞ自動車における知財情報活動 特許調査の負荷軽減
長池 将幸
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2013 年 56 巻 1 号 p. 28-35

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著者抄録

事業のグローバル化等,事業環境の急速な変化に対応するために,知財担当業務の拡大,知財サービスの品質向上が求められるようになり,これに伴い知財業務のリソース配分見直しが必要になった。このような環境下,知財業務の1つである特許侵害調査業務では,侵害リスク軽減と調査負荷軽減を共に満足する「経済的な調査手法」について検討した。公報抽出時の母集合を機械的に縮小する手法を整理したことで,それぞれの手法で縮小可能な規模とこれにより生じるリスクが見えてきた。本稿では,調査範囲を爆発的に膨らませずに侵害リスク回避に寄与する集合作成手法と,ここで必要な検索システムの機能を紹介する。

1. はじめに

いすゞ自動車株式会社(以下,当社とする)(http://www.isuzu.co.jp)は,日本で最初の自動車メーカーとして,1916年に創業した。2012年3月期現在,従業員数(連結)は24,656人,売上高(連結)は1,400,074百万円である。

当社の主な製品には,大型から小型のトラックと観光・路線バスを中心とした商用車,および,ピックアップトラック,SUV(Sport Utility Vehicle)があり,加えて,自動車用・産業用の各種ディーゼルエンジンをグループの中核事業として国内外に展開している。また,「「運ぶ」を支え,信頼されるパートナーとして,豊かな暮らし創りに貢献します」という企業理念のもと,社会的要請である“環境”と顧客ニーズである“高稼働・運営コスト”の分野で卓越した企業となることを目指し,2012年1月~12月には,普通トラック,2-3トントラック,大型バスで国内シェアナンバーワンの3冠を達成し,特に,2-3トントラックでは12年連続で国内シェアナンバーワンを獲得している。さらに,かねてより当社は,「商用車とディーゼルエンジンにおけるグローバルリーディングカンパニー」を目指す,というビジョンを掲げており,国内のみならず世界中に開発,生産,販売拠点を展開している。当社の製品が販売されている国や地域は百数十か国に及んでおり,海外売り上げ比率は6割強にのぼる。

現在当社は,従来の日本をベースにした事業体制から日本,インドネシア,タイを拠点としたグローバル三極体制への移行を進めており,知財活動も大きな転換期を迎えるに至った。例えば,知的財産業務として海外係争対策や現地法人との連携などが急拡大したため,これまで大きなリソースを投入していた他社権利の侵害回避活動を含む従来型の業務は相対的に縮小している。

本稿では,このような環境下における当社の知的財産活動の取り組み,特にコスト低減を考慮した「経済的な侵害調査手法」について紹介する。

2. 知的財産部門の体制と主な役割

当社における知的財産担当部門の体制を図1に示した。知的財産業務を担う法務・知的財産部は管理部門に属する部署であり,企画財務部門や営業本部,各種装置の企画・設計やデザインセンターを擁する開発部門とは独立した関係にある。そこで法務・知的財産部は,全社的なサポート業務を担う管理部門の一員として,他部門,他部署との連携に取り組んでいる。

図1 いすゞ自動車の知的財産担当部門の体制

この法務・知的財産部には,機能別に,「企画・渉外担当」,「権利化担当」,「管理担当」の3つの担当を設置しており,以下,それぞれの機能を情報システムの利用場面とともに説明する。

まず,知財業務の企画や社内外の渉外を担当している「企画・渉外担当」は,他部門との連携強化に関する業務において,出願動向の分析・報告や,SDI(Selective Dissemination of Information)の社内展開,教育を含めたシステム全社展開等で情報システムを利用している。また,他社対応に関する業務では,侵害調査,無効資料調査,審査経過の監視,他社の出願監視等で情報システムを利用している。

主に発明の権利化を担当している「権利化担当」は,出願前の先行例調査や引例の公報取寄せ等で情報システムを利用している。年金等の各種管理を担当している「管理担当」は,自社・他社権利の管理や特許庁手続きに情報システムを利用している。

なお,当社では,簡易な調査,簡易なマップ作成,SDIの受信に関する各種システムは,全社的に利用できるよう開放している。

以上の体制で当社の知財活動に対応しているが,前述のとおり,事業体制のグローバル化を受けて知財担当部門は大きな転換期を迎えている。図2に当社の知財活動の変化を示した。

図2 いすゞ自動車における知財活動の変化

繰り返しになるが,当社は事業領域の拡大と事業構造の安定化を図るため,グローバル三極体制への移行を会社方針として推進している。加えて,管理部門の部門方針である他部門との連携強化を受けて,知財担当部門としては知財サービスの向上を目指している。このような会社方針と部門方針に基づき,知財活動は外的環境への適応と社内への情報発信を活動に反映させるべく,社内外ともにオープンな体制・業務へと変化が必要であると考えた。

すなわち,調査業務を例に取ると,まず,従来から行っていた開発後の事後的な侵害調査に対し,製品化前の自社・他社の技術動向把握を踏まえた分析報告といった事前調査を増加させるような質的な変化が必要になった。また,従来の日本中心の調査から,海外展開や海外競合他社技術を踏まえた海外調査を拡充するような調査業務の量的変化が必要になった。そこで,知的財産担当部門としては,従来から活動していた日本出願を中心とした事後的な調査から,海外出願まで含みパテントマップを使って報告するような事前調査へとリソースを移動させることで対応を図ることにした。また,意匠・商標・ドメイン対応を含む海外係争対策や,現地法人との連携,知財活動の可視化等の業務が急拡大したことから,従来型調査業務自体のウエイトも相対的に低下させる必要があった(図2)。

3. 「経済的な侵害調査手法」の検討

各社事業のグローバル化とともに世界各地で知的財産権制度の成熟が進み,知財権の侵害リスクは増加傾向にあると認識している。一方,上述のとおり侵害回避に費やすことができるリソースには限界があり,リスク低減と負荷軽減をいかに両立させるか,すなわち,侵害調査を形骸化させずにいかに経済的に行うかが課題となった。そこで,当社における調査業務のリソース減に対応するために検討した「経済的な侵害調査手法」について紹介する。

まず,当社の侵害調査業務では,①リスクのある公報の集合を抽出し,続いて,②抽出した公報全件に対しスクリーニングを行っている。この場合には,②の公報スクリーニングの前に,①の公報の集合作成の段階で,侵害する可能性が高い公報を極力漏らさないよう注意しながら,可能な限り不要な公報(ノイズ)を選択的に除外して集合の濃度を高めておくことが効率的である。そこで,検索システムを利用して機械的に集合を小さく削り落として,その濃度を高めていく手法を整理したので順に紹介する。

なお,抽出公報の機械的な絞込み範囲は,各案件でどこまでリスクを許容できるかにより削り落とし可能な幅が異なる。したがって,実際の調査業務では案件の事業規模や地域,実施態様等を考慮しており,ここで紹介する手法を当社にてすべての案件で一律に適用するものではない。

3.1 公開公報と登録公報の重複を除外

まず,抽出対象公報の母集合を小さくすることを検討するのであるから,公開公報と登録公報の重複を除外することが考えられる。換言すると,登録公報と公開公報の両方が存在する場合は,登録公報を優先して抽出することを考える。検索システムによっては,公開公報と登録公報の両者が存在する場合に,登録公報のみ抽出するような機能を備えたものがある。

この手法によって実際にどの程度の公報の重複抽出が回避できるものであるか,日本特許庁発行の公開・登録の公報で1992年以降に特許出願されたもので確認したものが図3である。この結果によれば,公報全件約906万件のうち,約210万件で公開・登録公報が重複して存在することがわかった。すなわち,公開・登録の両方の公報が存在する場合に一方のみを抽出対象とすることで,全体の20数%の公報を抽出対象から除外することができ,上述の②の公報スクリーニングにおいて公開公報と登録公報とで1つの特許出願を重複して確認する負荷を回避することができる。

図3 公開公報と登録公報の重複件数の確認

しかしながら,このような登録公報を優先する絞込みを行った場合,例えば日本では登録公報が設定登録後約3か月で発行されているが,分割出願の公開公報の発行には4か月程度かかることを考慮すると,登録直後に分割され,未だ公開公報が発行されていない出願は抽出対象から漏れてしまう可能性がある等,公報の抽出漏れのリスクが考えられる。以降に述べるいずれの絞込み手法においても,機械的な絞込みにより発生するリスクを把握し,許容可能か否か判断しながら抽出対象の絞込みを行う必要がある。

3.2 権利が消滅した出願を除外

次に,本稿では開発時の侵害調査について検討していることから,すでに権利が消滅した出願を抽出対象から外すことを考えた。権利消滅後の特許権により自社実施が妨げられることはない。すなわち,侵害調査において公報を収集する際に,有効特許のみ機械的に抽出する場合について説明する。検索システムでステータス情報を用いた検索が可能な場合には,有効特許として「出願審査中」と「権利継続中」の2つのステータスにある出願のみ抽出する。

こちらも1992年以降の日本の特許出願で除外可能な公報件数を確認したものが図4である。上述のとおり,全特許出願のうち「出願審査中」の出願と「権利継続中」の出願のみを有効特許として抽出し,「出願審査中に消滅」と「権利消滅」の出願を抽出対象から除外することで,出願年の古いものを中心に60数%の特許出願を①公報抽出時の抽出対象からあらかじめ除外することができる。

図4 日本の特許出願のステータス構造

なお,今回は検索システムのステータス情報を用いて除外することを検討したが,例えば,ステータス上で消滅したように見える出願であっても,各国の権利回復制度等で回復する出願が存在することから,ステータスの付与条件は確認が必要である。

3.3 各国ファミリー出願の重複分を除外

続いて,複数国を対象に調査する場合に,各国ファミリー出願で重複する出願を除外することを考えた。これは,1つの特許出願に各国ファミリー出願が存在する場合に,ファミリー中1件のみを確認対象として抽出すること,すなわち,「ファミリー単位」で抽出することを考えるものである。複数国の公報を収録する検索システムの中には,ファミリーの単位を1レコードとして抽出できるものがある。前述①の公報抽出でこの公報群として抽出されたレコードから1件のみ代表となる公報を抽出すれば,続く②公報スクリーニングの関連性判断には足りる。なお,ファミリー内で抽出対象から除外した公報は,この②の公報スクリーニングの結果,技術的に関連すると判断された公報に対し改めて他の出願国を確認することでその存在を把握することができる。よって,「ファミリー単位」による抽出では,①の公報抽出時にヒットする公報数を減らすことができるとともに,②の公報スクリーニング時に調査対象技術と関連性の低い公報ではファミリー出願間の重複確認を回避することが可能である。

この「ファミリー単位」で抽出を行った場合の母集合削減効果を推定した。世界各国の特許文献をファミリー単位でカウントした件数は,例えば,特許庁発表の国際知財戦略2011年2月資料1)にある。これによると,2008年の全世界の特許出願件数は年間約191万件であり,これをファミリー単位に整理して重複除去すると,年間の出願件数は約120万件まで圧縮されることが報告されている。この数値を用いると,ファミリー単位で抽出することで37%近くの公報を抽出対象から除外できることになる。

一方,この「ファミリー単位」による抽出では,ファミリー出願間の権利範囲は類似するとの考えに基づき,重複して抽出することを避けるものであるから,同一ファミリー内であっても権利範囲が大きく異なる出願が存在した場合には,抽出漏れが生じる。

3.4 権利未確定分を除外

引き続き,権利未確定分を検索対象から除外することを検討した。すなわち,日本のように審査制度がある国で権利確定したことを示す「登録公報のみ」を検索対象にすることを考える。これは,検索システムにて検索対象を登録公報のみに限定することで抽出可能である。

ここでは,権利未確定分である「公開公報」のみ存在する出願を除外した場合のリスクを測るため,「公開公報」のみ存在する出願のその後の経過を想定した。図5は「公開公報」のみ存在する出願をその後の経過別に示したものである。

図5 公開公報のその後の経過

5では,公開公報のみ発行された特許出願のその後の経過を,一度も特許庁から拒絶理由通知(Office Action: OA)が通知されずにそのまま特許査定となる「一発特許査定」,特許庁の拒絶理由通知を経て登録査定を得る「OAを経て登録」,未審査請求を含む取下げ,あるいは拒絶確定により権利化されない「取下げ/拒絶確定」の3つのルートに分類した。ここで,特許庁のPPHポータルサイト2)によれば,日本特許庁における2011年7月から2012年6月の間の全出願(All applications including PPH and non-PPH)の「一発特許査定」率(First Action Allowance Rate)は13%と報告されている。したがって,拒絶理由通知の対応を経て登録となる出願と,取下げ/拒絶確定となる出願の割合は,“全数100%”から“「一発特許査定」率13%”を除いた87%にのぼることになる。すなわち,公開公報のみが発行されている特許出願の大部分はそのままの記載では特許として成立しないことを意味している。なお,「OAを経て登録」に該当する出願の中には,例えば,意見書の提出のみで対応する等,特許請求の範囲に対して何ら限定的な補正が加えられずに登録査定を得るものがある。このような出願は,特許庁の審査品質が維持・向上の傾向にある昨今3)においては全数に対してごくごく少数であると認識している。したがって,この権利未確定分を抽出公報に含めた場合には,このままの記載では成立しないであろう特許出願に対して,前述の①の公報抽出,②の公報スクリーニングの負担が生じ,さらには,調査対象技術との関連性が否定できないときには,無効化資料の調査,回避設計や採用断念,場合によっては,ライセンス交渉といった工程に進むことになる。

もちろん,除外することになる公開公報の中には調査後に「一発登録査定」,あるいは「OAを経て登録」することで権利が発生するものが存在する。

3.5 競合他社以外の出願を除外

本稿の侵害調査における最後の抽出除外の検討として,例えば,寡占市場のようなごく少数の売り手が市場を形成するような製品が調査対象の場合等,障害となる競合相手が調査前に判明している場合に出願人を限定して抽出することを考えた。これは,特定事業領域において競合する出願人が判明している場合に,その競合相手の出願のみを抽出対象とするものである。このような抽出を行う場合,名寄せ機能を実装する検索システムでは,より簡易に高精度な抽出が可能である。

6は,事業領域の重複を示す概念図である。特許の出願や維持にはコストが発生する。したがって,図6中の「他社A」や「他社B」のように事業分野が重複する競合相手に対し,事業分野が重複しない「他社C」や「他社D」が自社の障壁となる特許出願を有する可能性は小さい。

図6 事業領域の重複を示す概念図

しかし,競合相手以外の出願を抽出対象としない選択は,新たな参入者の出願を把握することはできず,場合によっては図6の「他社D」のように,権利者でさえ意図せず侵害が成立するリスクがある。したがって,この手法を採用する場合には,競合他社以外の権利者から権利行使の不意打ちを受けるリスクと,権利者の限定を外して調査した場合の負荷とを天秤にかける必要がある。

3.6 除外した公報の再抽出

これまで,侵害調査における上述の①公報抽出時に検索対象の母集合を機械的に縮小するための5つの絞込みについて紹介してきた。また,公報の除外により生じるリスクについても併記してきた。繰り返しになるが,調査対象範囲の絞込みは,これにより発生するリスクを予測し,これを許容できるか否かで採用可能な範囲が異なる。検討してきた公報の絞込みと予想されるリスクの例を図7にまとめた。

図7 公報の絞込みと生じるリスクの例

ところで,本稿で検討してきた機械的な公報の絞込みにより生じるリスクのいくつかには,過度な負担にならない簡易なフォロー策が考えられる。また,そもそも侵害調査における公報抽出時期は,調査対象技術の実施日あるいは公知日と比べ自ずと早い時点となる。しかも,特許出願には未公開期間が存在することから,侵害調査の公報抽出時点で侵害リスクのある公報全件を抽出・確認することはできない。もちろん,これら公報に対して二度,三度の公報抽出を行うことは可能であるが,短期間に同条件の侵害調査を行うことは,必要な負荷に対して効果が小さい。そこで,これに代わる簡易な手法として,初回の公報抽出時と同じ,あるいは,初回の抽出結果を考慮して,より抽出範囲を限定した検索式を検索システムに設定しておき,公報収録ごとにメール配信させるSDIの利用がある。現在,日本だけでなく各国で発行された公報をSDI配信可能な検索システムが登場しており,新たな公報を簡易に入手可能なシステムを構築することができる。これにより,公報抽出時期に起因する調査漏れだけでなく,例えば,機械的に調査対象から除外した公報についても公報収録のタイミングで順次入手することが可能である。

また,本稿の検討は侵害調査を前提にしてきた。そのため,例えば,権利が消滅した出願や,公開のみしか存在しない出願,競合他社以外の第三者の出願等を除外することを検討してきた。しかし,これらであってもその需要に応じて,公報の収集,SDIの利用,あるいは,出願動向等を示すパテントマップの作成等で補うことができる。以上,ここに挙げた「経済的な侵害調査手法」は,開発の事後調査に対して事前調査のウエイトを大きくすることを目的とした当社のリソース移動の意図を反映したものであり,時機に応じた調査の使い分けが経済的な調査手法に大きく寄与するものと考える。

4. 検索システム

さて,前述のとおり,当社では事業体制の移行や知財サービスの向上を目的に,海外調査を拡充させている。そのため,侵害調査用の公報抽出に用いる検索システムでは,調査国によってデータベースを切り替えたり,検索式を組み替えることなく,一度の検索で必要な調査国すべてをシームレスに検索できることが望ましい。

また,出願のグローバル率が高まり,1つの出願が複数国に展開されるケースが増加している。そのため,公報単位の抽出では,同一ファミリー出願であっても各国で発行された公報の件数分ヒットすることになり,ヒット件数が膨大になってしまうことがある。したがって,3.3節で述べたとおり,複数国を調査対象とする調査では,公報単位で抽出するのではなく,ファミリー単位で抽出できることが望ましい。

さらに,昨今の調査環境の向上により,多くの検索システムで収録対象とする発行国の数がすでに十分拡大している。しかしながら,侵害調査を行う際には,収録国数の拡大よりも1か国における収録率向上が調査の信頼性向上に寄与する。特に,概して東南アジア圏では,各国特許庁発表の出願件数4)に対し,実際の検索システムに収録されている公報件数の少なさに驚かされることがあり,今後の改善に期待する点である。

5. おわりに

本稿では,当社の業務範囲の拡大や知財サービス向上を背景としたリソース移動に対応するために検討した「経済的な侵害調査手法」について紹介した。また,このような侵害調査で利用する検索システムに対する期待を述べた。いずれも経験的に理解,あるいは暗黙知に該当する範囲かもしれない。しかしながら,当社では拡大する知的財産業務を俯瞰してリソース移動が迫られる中で,リスク低減と負荷軽減を両立するには社内の認識共有化が不可欠であり,ある程度の形式知化が必要であった。

補足になるが,当社では侵害調査における前述の①公報抽出のような場面でも,案件によってはアウトソーシングを検討してきた。この場合も,発注までに検索対象とすべき公報の絞込み範囲を明確にしておくことで,案件間での調査レベルのバランスを取ることができるとともに,担当者によるばらつき抑制,費用,納期にも大きな効果が見込まれる。

なお本稿は,2012年11月8日に開催された「2012特許・情報フェア&コンファレンス」における企業プレゼンテーション「いすゞ自動車株式会社における知財活動と今後の展望」で講演した内容に加除修正したものである。当社の検討紹介が,知財業務に携わる方々の参考になれば幸いである。

参考文献
 
© 2013 Japan Science and Technology Agency
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