情報管理
Online ISSN : 1347-1597
Print ISSN : 0021-7298
ISSN-L : 0021-7298
情報界のトピックス
ジャーナル フリー HTML

2013 年 56 巻 7 号 p. 485-488

詳細

電子書籍価格操作をめぐる訴訟に裁判所命令

電子書籍価格操作をめぐる訴訟で,Apple社が独占禁止法に違反したとの判断が下された後,米国司法省はApple社に対して修正和解案を提案したが(vol.56, no.6の本欄にて既報)。Cote判事は9月5日,司法省が提案した差止命令を和らげた内容の最終命令に署名した。

和解案に対しては出版社側からも大きな反応が示された。Apple社の共謀加担者として提訴され,後に和解に応じた5大出版社は,和解案に反対する弁論趣意書を連邦裁判所に提出した。「和解案の条項は,Apple社の価格設定行動に対しては少しも制限を課しておらず,Apple社を罰すると称して,エージェンシーモデルを使用するApple社との協定を禁止することにより,和解に応じている被告(出版社)を事実上罰するもの」であり,Apple社よりも出版社に対して,より多くの損害を与えると出版社は抗議した。これに対し,司法省は,和解案はApple社をターゲットにしたものであり,出版社に対して何かをするつもりはないとの回答を提出した。

Apple社は,上訴するまですべての訴訟手続きを中止することを裁判所に求め,同意が得られない場合は,司法省が提案する2014年4月ではなく,10月に損害賠償の審理を開くことを提案した。それに対して司法省は,訴訟手続きの中止に同意しないよう要求する書簡を裁判所に提出した。Cote判事は8月9日に行われた審問で,Apple社が求めた訴訟手続きの中止要求と損害賠償審理のスケジュールを拒否し,2014年2月末までに,略式判決を求める申立て書を作成するよう命じた。また判事は,司法省が提案した差止命令は出すが,その前に差止命令の範囲について司法省とApple社がさらに話し合うよう求め,急速に発展する電子書籍市場における改革を妨げるような長期間の差止命令で,両者を苦しめるようなことは望まないと述べた。その結果,司法省は差止命令の内容を和らげた修正案を8月23日に提案した。この修正案においても,Apple社は5大出版社との現行の電子書籍協定を終結しなければならないが,再交渉を許されるまでの期間が,5年から2~4年に短縮された。最も短いHachette社は最終判決の有効日から24か月,HarperCollins社が30か月,Simon & Schuster社が36か月,Penguin Random House社が42か月,最後のMacmillan社は48か月である。独占禁止法を遵守させるための外部モニターの必要性については,内部で独占禁止法遵守を強化するというApple社の主張は信頼できないとして,Cote判事は主張を退けた。

8月27日の審問において,差止命令の修正案をさらに和らげる判決を下す意向を明らかにしていたCote判事はその9日後,最終差止命令に署名した。司法省は,外部モニターを5年間,裁判所の判断でさらに最大5年間任命できることを要求していたが,この期間が2年間,延長は1年までに軽減され,外部モニターの役割も,Apple社の日常業務を報告することよりも,独占禁止法遵守の研修方法へのアドバイスに主眼が置かれることとなった。競合する電子書籍小売業者に,Apple社のiBooks Storeをバイパスして,iOSアプリを自分たちのオンラインブックストアに直接リンクさせるという案は削除された。Apple社に5大出版社との現行取り決めを止めさせる条項も緩和され,終結させるのではなく,修正を要求されることになった。再交渉が許されるまでのスケジュールは,司法省の修正案のままである。この判決は,正当な理由により延長されない限り,5年で失効する。

33の州検事総長などによる集団訴訟は,電子書籍価格操作によって消費者が被った損害の回復をめざしており,賠償金についての審問は2014年5月に予定されている。

  • (http://www.justice.gov/atr/cases/f300200/300263.pdf)(accessed 2013-09-09).

    (http://www.justice.gov/atr/cases/f300500/300510.pdf)(accessed 2013-09-09).

ブック検索をめぐるGoogle対作家組合訴訟

Googleブック検索をめぐる訴訟で,米国出版社協会は2012年10月に和解に達したが,8年にわたる係争を継続中の作家組合(Authors Guild)との闘いが再び山場を迎えている。Googleが,スキャニングは変容的利用であると主張しているのに対し,ニューヨークの連邦裁判所に略式判決(Summary Judgment)を求める意見陳述書を提出した作家組合は,Googleのスキャニングプロジェクトは公共サービスなどではなく,他の検索エンジンに対する競争上の優位性を得て,さらに多くの広告収入を生み出すための商業的な企てであると主張した。Googleは,自分たちのスキャン計画は公正使用権によって保護されており,公益と同時に作家の利益をも提供するものであり,著作権所有に何らかの害をもたらすという証拠はないと反論している。スキャニングは著作権所有に害を及ぼさないとするGoogleの主張を崩すために,作家組合は,スニペットが実際に有害であることを,実例を挙げて説明したが,Googleは,作家組合が公正使用の根本的な誤解をさらけだしていると反論した。作家組合は,Googleが無許可のコピーを大学図書館に配布して,作家の作品を危機にさらしていると再び非難したが,Googleは,蔵書のコピーを作成しているのは図書館自身であるとの主張を繰り返した。

  • (http://www.authorsguild.org/2013/08/)(accessed 2013-09-09).

Facebook,政府によるデータ請求の詳細を公表

Facebookは8月27日,「世界の政府による情報開示請求報告書」(Global Government Requests Report)を発表した。同社が初めて発表したこの報告書では,(1)Facebookに対して,ユーザーのデータの請求があった国,(2)各国からの請求件数,(3)請求対象となったユーザー数(アカウント数),(4)そうした請求のうち,少なくとも法律に基づいて何らかのデータの開示が行われた請求の割合,が報告されている。これによると,Facebookは2013年前半に,世界全体で約38,000人分のデータを公開している。請求件数と,請求対象のユーザー(アカウント)数の両方で,アメリカが1位となった。アメリカの請求件数は11,000件から12,000件,請求対象のユーザー数は20,000件から21,000件で,うち79%が何らかのデータの開示が行われたという。データ請求を行った国は合計74か国で,アメリカに続いて,2位インド,3位英国,4位イタリア,5位ドイツとなった。日本は1件のアカウントについてデータ請求があったが,開示されなかったという。こうしたデータ請求の大半が,窃盗や誘拐など犯罪に関するもので,政府が請求する内容は,名前やサービス利用期間といった基本的なユーザー情報が大半とされるが,一部の請求は,IPアドレスのログや,アカウントにあるコンテンツも含んでいた。同社は,政府によるデータ請求はすべて厳格なガイドラインに基づいて処理するとしている。Facebookはこのレポートを今後定期的に発表する予定だ。

  • (http://newsroom.fb.com/News/699/Global-Government-Requests-Report)(accessed 2013-09-09).

文化審議会,「電子出版権」創設を提言へ

文化庁の文化審議会著作権分科会出版関連小委員会は9月5日に開催した会合で,「電子出版権」の創設を盛り込んだ,著作権法改正に関する中間報告をまとめた。現行法では,紙の出版物が前提にあり,電子書籍の海賊版については,出版社には訴訟を起こす権利がない。「電子出版権」が創設されれば,著作権者と独占契約を結んだ出版社であれば,海賊版の差し止め請求を行えるようになる。「電子出版権」の創設については,2013年2月に経団連から「電子書籍の流通と利用の促進に資する「電子出版権」の新設を求める」との提言がなされるなど,創設を求める意見が高まっていた。中間報告では,電子書籍の普及や海賊版対策の観点から,新たに電子出版権を整備する必要性を指摘。電子書籍権を獲得できるのは,現行の出版権を有する出版社だけでなく,著作物を電子書籍として電子出版することを引き受ける者であれば権利を獲得できるとした。文化庁では今後,この中間報告に対する関係者および一般からのパブリックコメントを募集する予定。

  • (http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/shuppan/h25_07/gijishidai.html)(accessed 2013-09-09).

デジタル教科書開発のコンソーシアム発足

教科書会社12社とシステム会社の日立ソリューションズは9月5日,国内初の次世代デジタル教科書の共通プラットフォーム開発に取り組むため,コンソーシアム「CoNETS(コネッツ)」を発足したと発表した。「CoNETS」では,教科や教科書会社によって異なっていたデジタル教科書の操作性を統一し,さまざまな端末で使用できるマルチプラットフォームを開発することで,「デジタル教科書のスタンダード」を目指すとしている。より多くの教科書会社に呼びかけ,同システムでの配信・運用を可能にし,2015年4月の小学校の教科書改訂時をスタートに,中学校,高等学校の順で,製品をリリースする予定。参加する教科書会社は,大日本図書,実教出版,帝国書院など。CoNETSでは,デジタル教科書について,映像や音声による学習意欲の向上や,先生と児童・生徒の学習情報の共有化,学習目標の焦点化など,紙の教科書にはないメリットをあげつつ,各社デジタル教科書の操作性の違いや,学習スタイルの多様化による先生や児童・生徒の戸惑いなど,さまざまな課題も表面化していると指摘。教科書づくりで培ったノウハウで,子どもたちの学びと教育現場をサポートしたいとしている。

  • (http://www.conets.jp/news/2013/0905-2/)(accessed 2013-09-09).

政府のツイッター活用,南米各国が積極的

広報エージェンシーの米Burson-Marstellerは9月4日,ツイッターに関する「2013年度Twiplomacy(ツイプロマシー)調査」の結果を発表した。これは,153か国の大統領,首相,外務大臣およびそれぞれの政府機関(大統領府,政府,外務省)などのツイッター約505アカウントについて,それぞれのフォロワー数,ツイート頻度などを調べたもの。2013年7月1日時点で最もフォロワーが多かったのはオバマ大統領(@BarackObama)で約3,351万フォロワー。2位はローマ法王(@Pontifex),3位は米ホワイトハウス(@whitehouse)だった。日本の首相官邸(@kanteiと@JPN_PMO)は43位,安倍首相(@AbeShinzo)は66位だった。1日の発信頻度では,ベネズエラ・ボリバル共和国(@PresidencialVen)が1日平均約42ツイートで1位だった。2位以下も,南米の政府機関がツイート回数で上位に並び,積極的にツイッターを使って情報発信をしていることがわかる。日本のアカウントでは,外務省(@MofaJapan_jp)が一番多く,1日約10回で34位だった。この調査結果では,国連加盟国193か国の政府のうち約78%がツイッターのアカウントを保有しており,各国の首長や政府機関によるツイッター利用が当たり前になっているとしている。

  • (http://kantar.jp/whatsnew/2013/09/04/Topics_130904_Twitter.pdf)(accessed 2013-09-09).

青少年のネットリテラシー,スマートフォン利用者は低め

総務省は9月3日,青少年のインターネット・リテラシーに関する実態調査の結果である「平成25年度青少年のインターネット・リテラシー指標等」を発表した。この調査は,全国の高校1年生(約3,500人)を対象に,インターネット・リテラシーを図るテストと,情報機器の利用実態についてのアンケートを同時に行った結果をまとめたもの。これによると,スマートフォンの保有者は全体の84%と昨年度の59%より大幅に上昇。1日当たりの平均使用時間は2時間以上という答えが最も多かった(56%)。インターネットに接続する際に最もよく利用する機器についても,スマートフォンが75%で1位となり,ほかの機器を大きく上回った。一方で,インターネット・リテラシーに関するテストは昨年度より平均的に上がったが,スマートフォンを最もよく利用する回答者は,PCをよく利用するという回答者にくらべて正答率が低く,特にスマートフォンのみを使用している場合の正答率が低かった。報告では,「スマートフォンは手軽にインターネット接続できる一方で,特に高いリスク認識,対応能力のないまま利用しているとみられ,スマートフォンに関するリテラシーの向上が急務」と指摘している。

  • (http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_02000120.html)(accessed 2013-09-09).

    (http://www.soumu.go.jp/main_content/000247066.pdf)(accessed 2013-09-09).

Facebook,発展途上国へのネット接続提供に取り組む

Facebookのマーク・ザッカーバーグは8月20日,現在インターネット環境がない世界の50億人にインターネット接続を提供することを目的とした世界的パートナーシップ「Internet.org」の設立を発表した。発表によると,現在インターネットに接続しているのは27億人と,世界人口の3分の1強にとどまっている。インターネット接続の増加率は年9%以下で,発展の初期段階にあることを考えれば,増加率は低いと指摘している。世界の残り3分の2の人々をつなげるという目標のために,(1)インターネットアクセスの低価格化,(2)データ利用の効率化,(3)ビジネスモデルの開発を行うとしている。このパートナーシップには,Ericsson,MediaTek(台湾の半導体メーカー),Nokia,Opera,Qualcomm,Samsung Electronicsの6社が参加している。

  • (http://newsroom.fb.com/News/690/Technology-Leaders-Launch-Partnership-to-Make-Internet-Access-Available-to-All)(accessed 2013-09-09).

    (http://internet.org/)(accessed 2013-09-09).

 
© 2013 Japan Science and Technology Agency
feedback
Top